「PFF2022納得のグランプリ」J005311 shironさんの映画レビュー(感想・評価)
PFF2022納得のグランプリ
背中から始まる映画に弱いので、しょっぱなから引き込まれました。
ダルデンヌ兄弟監督を彷彿とさせるハンディ長回しがたまりません。
結局私は、見えていない部分を覗き込みたいのです。
誰?何?どこ?
最小限のヒントを読み取ろうと、ポンコツ頭がフル回転して、人物の心情に入り込んでいきます。
窓の外と同じ息苦しさから、ただならぬ空気を感じとります。
車道に出ただけで、まさか轢かれる気なのか?と心配してしまう程。
優しすぎるが故の生きづらさ。
ちょっとしたシーンから、これまでの彼の生き方が垣間見えて、胸が詰まりました。
常にギリギリ感が漂っていますが、とくに神社のシーンは祈るような気持ちで見届けました。
相容れない筈の二人が、かけがえのない存在になっていく。
車の横で所在なさげに立つヤマモトが、まるで捨てられた子供のように見えて…。
不意にヤマモトから、大切な人を失ったイメージが湧き上がってきました。
ネグレクトだったのか、不慮の事故だったのか。。。帰ってきてほしいと待ち続けて叶わなかった孤独な魂が見えました。
怒りと悲しみと、無力だった自分への苛立ちの中で生きてきて、二度と目の前の人を失いたくない思いが行動させたのか。
カンザキはヤマモトに救われて、ヤマモトもカンザキに救われた。
緊張感を維持した長回しは、役者には相当キツイ撮影だと思うのですが。
そもそも役者のお二人なので、むしろ望むところだったのでしょう。
その実力を見せつけられました。
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