劇場公開日 2024年4月5日

  • 予告編を見る

「見終わった後、大人は切なさの余韻に浸る」パスト ライブス 再会 kikiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0見終わった後、大人は切なさの余韻に浸る

2024年5月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

劇中の会話で登場する映画、『エターナルサンシャイン』をリアルタイムで鑑賞した世代。
私たちは、あれからまた年齢を重ねて今、「パストライブス」を涙なしに観ることは出来ない。

『エターナルサンシャイン』は、恋人とひどい別れ方をして、心が壊れてしまいそうな程の失恋の辛さから、その恋人との思い出の記憶を消してしまう。
お互いに記憶を消してもなお、再会すれば自然と惹かれ合ってしまう。
それを「奇跡」なんて言葉にすれば陳腐になる、目には見えない不思議な力が再び二人を結ぶ。
そう、『エターナルサンシャイン』もまた「縁」にまつわる物語だ。

人生には、『自分で選択できるもの』、『そうでないもの』、『選択できたのに違うもの』を選ぶことがある。
年齢を重ねると「現実」、「環境」、「感情」、「今までの努力」がその選択を曇らせたり、鈍らせたりする。

それは、たとえ自分で悩んで選択したものでさえ、過去を振り返ると、果たしてそれが正しい選択だったのか不安になることがあるし、心のどこかがズキズキと痛むことだってある。

初恋として心にとどめていれば、12歳だったあの頃の自分が、ずっとこの先も生き続けられたかもしれない。
だけど、彼女が選んだ「再会」の結末は、12歳の自分を手放し、今という現実を生きること。

それを自ら選び、歩き出したのに、、、とめどなく溢れ出てしまう涙…

「過去」にするには早すぎて、無理やり「縁」とラベリングしていくしかないのだ。

タクシーを待つ2分間のラストシーンで交差する2人の感情。
永遠に終わらないで欲しいと願う「沈黙」がそこにあった。

kiki