劇場公開日 2024年4月5日

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「すれ違い、めぐり逢い。人生、そんなもの」パスト ライブス 再会 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5すれ違い、めぐり逢い。人生、そんなもの

2024年4月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

萌える

冒頭のシーンは諧謔に満ちている。
バーカウンター並んで向かう三人の男女。
一人の男性と女性はアジア系、
もう一人の男性はアングロサクソン風。

傍目からは、観光で訪れたアジア人夫婦と
ガイドの白人男性か、それとも・・・・、と
口さがない。

実は自分も似たような体験が。
部下だった女性が国際結婚をしてスペインに移住、
久々に帰国するので呑まないかとの誘い。

酒の席で彼女と自分は日本語、
彼女と夫はスペイン語、
彼女の夫と自分とは片言の英語での会話。

三角形のやり取りが続くなか、
彼女がトイレに立った時の間がなんともぎこちない。

自分と彼女に恋愛感情が無かったことは
幸いだったが・・・・。

幼馴染の男女が、少女がカナダに移住することで離れ離れになる。
往時十二歳の二人は、互いに淡い恋心を抱いていた。

それから十二年後、
たまたま『ノラ(グレタ・リー)』が『ヘソン(ユ・テオ)』の名前をネットで検索したことから、
不思議な縁が二人を再び結び付け、折にふれSkypeで会話をするように。

とは言え、彼女はニューヨーク、彼はソウルの時差十三時間、
一万キロ以上離れた遠距離。次第に心の隙間が広がり交流は途絶え。

更に十二年後、『ノラ』は既に現地で白人男性と結婚をしており、
それでも『ヘソン』は彼女に会うためニューヨークへ向かう。

物語りは三つの時点で語られ、その間に何があったのかは
ほとんど触れられない。
逆にそのことが見る側の想像をたくましくさせる。

今でも『ヘソン』は彼女のことが好きなのは明白。
一方の『ノラ』の態度からは彼への未練は微塵も感じられないようにも見える。

なまじ自分が男であるだけに
切ない想いの『ヘソン』についつい強く感情移入。

もっとも『ノラ』の夫も、彼なりの不安を持つ。
彼女の変心の可能性を日頃の言動から気にせずにはいられない。

韓国語での「イニョン(因縁)」や「輪廻転生」について幾たびも語られる。
前世や前々世に於いて、二人は何らかのカタチで関わって来たとの。

が、夫婦であったかもしれない可能性にはついぞふれられることはない。

三様の思惑が絡み、
幾つもの可能性を孕みながら、先の読めぬストーリーは静かに進む。

そして二人がUberを待つシーンで万感の想いが溢れ出す。
2分と区切られているのに永劫に近く感じる秀逸な場面。

劇中で挿入された〔エターナル・サンシャイン(2004年)〕とも繋がり昇華。
先の映画は失恋の痛手を癒すため、それに係わる記憶を消す手術を受けるSF映画だが、
本作では互いの思慕は忘れられることはない。

ちょっとしたボタンの掛け違いが望まぬ結果に繋がる悲愴。

時を経てから取り返そうとしても
時間は巻き戻ることはない。

過去の悲しい想いを持ちながの人生はあまりに辛いのか
それとも抱え込みながたおやかに生きるのか。

ココロの芯まで揺さぶられる{恋愛映画}の佳作。

ジュン一