「クールでかつ美しい。今、観るべきラブストーリーの筆頭です。」パスト ライブス 再会 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
クールでかつ美しい。今、観るべきラブストーリーの筆頭です。
さすがA24。脚本、演出、総指揮のセリーヌ・ソンという素晴らしい才能を発掘した。ちょっとソフィア・コッポラを思わせるナイーブな作風。
ナヨンとヘソンは12歳の時に離れ離れになり、12年後には一旦連絡を取り合うようになるがニューヨークとソウルでそれぞれ暮らしているため恋愛関係までには至らなかった。更に12年後、ニューヨークで二人は再会することになる。この12年ごとという時系列と、繰り返されるイニョンという概念から、よくある因果応報というか「生まれ変わったら一緒になりましょう」のような話かと思っていたが、これは変化球でした。
ナヨン=ノラもヘソンもそしてノラの夫アーサー(ジョン・マガロ。「ファーストカウ」に続き繊細な素晴らしい演技です)も不可知論的に運命に左右されることがイニョンだとは思っていない。人生には選択を迫られる岐路が時としてあるものの、その時々の自分の判断や行動もイニョンであってそして不可逆的に昔に戻ることはできない。たとえノラのニューヨークでの成功がささやかなものであり、ヘソンは韓国で平凡でかつストレスフルな会社員生活を続けるのだとしても。
その諦観、でもそれぞれの人生をそのまま生きていくことの決意、希望をこのラブストーリーはクールに映し出し、だから美しい。
カメラワークが素晴らしい作品です。ブルックリン側のブリッジパークで撮影されたシーン群も美しいけど、特に最後のシーン、ヘソンと別れたノラがゆっくり歩きアーサーに迎えられアパートの階段を二人で登っていく、そしてドアが閉まるところまでをワンカットで捉えているところ。余韻というのはこういうことなのだなと感じました。
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