劇場公開日 2023年10月27日

「計画通りにやれ」ザ・キラー とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0計画通りにやれ

2023年12月2日
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"自分の未来は思い通り予想できる"=運命は手の中などと考え思い上がった人がいるとしたらそれは大間違いだ!あるいは、本当に望みのままそうできるごく一部少数の限られた特別な存在か。そう受け入れて生きたほうが残りの人生を楽しめ、結果的に我が物にできるのではないか?所有のためのコントロールの放棄。そう、フィンチャーとこの役柄に完璧にフィットしたファスベンダーが教えてくれる犯罪スリラー。
ただ、現代のリアルなテクノロジーも感じる本作の中で『ファイト・クラブ』との共通点も見出だせる。それは、マクドナルドやAmazonへの言及および登場だ。『ファイト・クラブ』の全てのシーンにスターバックス(スタバ)のカップが映っているのは有名なエピソードだが、本作もまたそうした形で大量消費社会を描き、そこにあまりに増えた現代人の画一的匿名性を込める"その他大勢"。

殺し屋は待つのも仕事。自分の美学を長々と話した後にまんまとヘマして、業界の通例として掃除屋に狙われたがために、逆にたくさん殺す映画。…と書くと少し間抜けな"ヘマした殺し屋プロット"だが、本作自体は -- 他のフィンチャー作品同様(グレーディングもフィンチャー色) -- 恐ろしく手際よく進んでいく。
赤というより断然青の炎な理系頭によって隅々まで練られ・作り込まれたようなこの作品は、決められた"予測不可能"な結末へと淡々と冷たく展開されるわけだが、その中で観客に映画としての気持ちよさという意味で興奮とカタルシスを与えてくれることも忘れてはいない。相変わらず『セブン』や『ファイト・クラブ』、『ゾディアック』等と比べると観客受けはそこまで高くなさそうだが、もはや職人技の域に達している。

予測しろ、即興はよせ。対価に見合う戦いにだけ挑め。誰も信じるな。…狭く焦点を絞る。どうでもいい。

自分の未来は予測不能だ
勝手に関連作品『リミッツ・オブ・コントロール』『ジャッキー・コーガン』

とぽとぽ