「自称・成功率10割の殺し屋は意外とドジ。」ザ・キラー 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
自称・成功率10割の殺し屋は意外とドジ。
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デヴィッド・フィンチャーの真意は知らないが、これは『ゲーム』以来のコメディ作品と見た。ただ深刻そうな空気とクールな劇伴のせいで、日本ではなかなかコメディと認識してもらえないタイプだと思うけれど。
とにかく主人公がモノローグで喋っている。おそらく自ら編み出した、もしくは誰かの受け売りなのかも知れないが、殺し屋としての仕事の心得を心のなかで繰り返し唱え、身体を鍛えたり瞑想したりすることで、集中力を高めている。にもかかわらず、このひとすごい失敗をするのだ。
それも、予期せぬ事態が発生して、とかでもない。われわれ殺しの素人でも、いや、そこは慎重にやったほうがいいんではないかい?と問いたくなるような失態を晒し、それでも自分を必死に落ち着かせ、自分が突き詰めてきたお仕事哲学から逸れないように、ひとつひとつ手を打っていく……はずが、やっぱりこの人、ドジだ。ドジだからこそ、自分に完璧を求め、必死でお題目のように自分に課したルールを唱え続けているのかも知れない。
決して無能でもないけど、伝説の殺し屋でもない。ある意味、失敗もするけどマジメな仕事人間が、自業自得で自分が敷いたはずの道から外れていく。スリリングだけどどこか間抜けな、そして、似たもの同士の同業者に出会ったりもして、殺し屋界隈も大変だなとちょっと同情までしてしまう。決してひとつのジャンルで括れるものではないが、自分的には100%いい意味でヘンテコなブラックコメディでしたよ。
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