「この世界を救うには」世界の終わりから サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
この世界を救うには
紀里谷和明監督の最後の監督作と謳われ、期待の新人・伊東蒼の主演映画。ということで、絶対に映画館で見なければ!と思っていたのですが、近所の映画館は朝早い時間の1本上映であったため、なかなか時間が合わず、公開終了前日にしてようやく見ることが出来ました。ギリギリになったけど、見て本当に良かった。最後の監督作、というだけあって、紀里谷監督の魂が籠っていた。あまりの衝撃に、涙が止まらない。そんな臭い謳い文句が1番にハマる、完璧な映画です。
ストーリーは同日公開の「ノック 終末の訪問者」にとても似ている。突如として現れた、終末を知らせる謎の集団。彼らは「終末を止めるには、君の力が必要なんだ」と話す。もう、そっくりですね笑 だけど、本作の方が圧倒的に見応えがあるし、何故か説得力もある。様々な要素が絡み、現実離れした物語であるにも関わらず、しっかり地に足着いていて、驚くほど綺麗にまとめられている。
環境汚染やネット社会、メディアの愚かさ、家族との絆、いじめ、陰謀論などなど、この日本という国で蔓延る多くの問題を1つの映画にまとめるという至難の業を、難なく成し遂げてみせているのが本作。先日公開された「ヴィレッジ」の成功例とも言えると思う。これらの問題は、結局解決するのだろうか。そもそも人々は、これらの問題を解決しようと思っているのか。やり尽くされたテーマを、根本から揺るがすことによって人々に訴えかけるという、この作品の斬新さがたまらなく胸に刺さる。
その上、ファンタジーのようなSFのような、摩訶不思議な要素も絡んできて、脳内はパンク寸前。日本映画でこんな体験が出来るとは思ってもみなかった。〈過去・未来を記す本〉の真実と〈主人公が鍵を握る〉その理由。かなりぶっ飛んでいて、主人公と同じように全然理解できない。作品の7割近くは付いていくのに必死。まるで、クリストファー・ノーランの映画のよう。だけど、ラスト付近になるとその理由やら、この映画が本当に伝えたかった更に奥深くのところまで、丁寧に示され、自分でも驚くくらいに涙が零れてしまう。
世界の終わりの近さを暗示させる音楽や緊張感をとぎらせないカット割り。主人公・ハナの感情を全面に出すような明暗のコントラスト、夢の世界を繊細に映し出すモノクロ映像。映画館という空間を上手く使い、〈終末の世界〉を悲しくも美しく描いている。それはまるで、絵画のような唯一無二の尊さ。ストーリーどうこうの前に、まずそこに惚れてしまう。紀里谷監督の作品は1度も見た事がなかったのだけど、こんな映像作品が作れる監督が日本には居たのかと、嬉しい気持ちと、こんな優れた監督がもう映画を作らないという寂しい気持ちが、劇中で何度も襲ってきました。
監督最後の作品ということもあってか、かなり豪華なキャストが顔を揃えている。役者の良さも存分に発揮出来ているし、役者も演技を存分に楽しんでいるように思える。高橋克典の官房長官、北村一輝の死神、夏木マリの占い師、冨永愛の未来人と、笑っちゃいそうになるほどビジュアルと個性を活かした配役に心が踊る。
そんなキャラが強すぎるキャストを脇に、主人公を務めるのは「さがす」で観客の心を鷲掴みにした伊東蒼。もう、彼女ヤバいぞ。絶望に立たされ、悲しむことも辛いという状況を顔の表情だけで表現する。苦しみ、もがきながら涙を流すシーンが何度もあるのだが、どれも印象的で、どれも同じには見えない。その時々に合った感情が涙から伝わる。鳥肌を立つような演技を彼女は体現してくれる。もはや、天才の域超えてますよ?不思議と引き込まれてしまう、魅力だらけの伊東蒼。今後の日本映画は彼女に託された!
この世界を救うには、どの選択をするべきか。
人間は、世界が救われることを願っているのか。
世界は人間だけでは無い。人間は、この世界しか無い。壮大な物語ながらに、今を生きる人々に伝えたい監督の最後の小さな思い。何度語っても語り尽くせない、素晴らしいラストでした。上映館も少なく、もう上映終了となる劇場も多いでしょうが、是非とも見て頂きたい。今年ベストはこれで決まりか?だとしたら、個人的年間1位に2年連続で伊東蒼の出演作になるんだけど笑
伊東蒼良かっですよね。まだ10代。撮影の頃はもっと若かったかもしれませんが、決して美人すぎることはありませんが、可愛らしく、何より存在感が凄いですよね。今後が楽しみです。
こんにちは❗️
コメントありがとうございます。
あくまでも、私なりの解釈なんですが、何度救ったら目が覚めるんだ⁉️
という憤りの感情を一回噴出したくなったような気がするのです。
たぶん映画製作途上で、ロシアのウクライナ侵攻とか香港の民主化潰しとか、まぁ権力者たちのアレコレがあって、本当に俺たちって救いようがないというか、救う価値なんてあるのかな?
なんて気持ちが少し強くなって、編集に影響したとか…