「Yes! I Can Fly!!」宇宙人のあいつ ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
Yes! I Can Fly!!
十年前に両親を亡くし、
それからは互いに支え合って生きて来た四人の兄妹。
そのうちの一人が宇宙人だったら、との
徹頭徹尾{フアンタジー}の中に、
地球的家族の絆を盛り込んだ{コメディ}。
ややありきたりではあるものの、
家族間の愛情を丁寧に謳い上げる。
自分は全くそういった感情はわいて来なかったものの、
劇場内では最後のシークエンスに向け涙を拭う人の姿が多数。
土星から二十三年前(土星の公転周期)に来た宇宙人は
次男の『日出男(中村倫也)』。
到着の様子や、亡き両親と長兄『夢二(日村勇紀)』がすんなりと彼を受け入れた経緯は不明も、
長女の『想乃(伊藤沙莉)』や三男の『詩文(柄本時生)』は何の違和感も無く暮らしてはいた。
過去の記憶を操作されたとの仕掛け付きで。
しかし、あと一ヶ月で地球を離れねばならぬタイミングになり、
自身が宇宙人であることをカミングアウトしたことから、
幾つかの騒動が出来。
まずもって驚く末子二人も、そこには悲愴感や
危機感はまるっきり無く。
全てがギャグに彩られ、
「ああそう言えば、思い当たる節が」と
すとんと胸の中に落ちて行く。
そのシークエンスが既にして笑いにまみれ、
以降このテイストが延々と繋がって行く。
『日出男(土星名、トロ・ピカーナ』は漫然と地球に来たわけではなく、
幾つかのミッションを持っており、
中でも最大の使命が未だに未達成であることに思い悩む。
それを完遂するには、何よりも大切と教えられて来た
(土星人には無い感情の)家族の関係性を損なう恐れがあったから。
とは言え、物語の全体を貫くトーンにシリアスさは見られない。
会話に駄洒落は飛び交い、周囲の登場人物も
ほぼほぼハートフル。
が、こうした一家にも、それなりの問題が
ここぞとばかりに起こり、
『日出男』は持ち前の異能でそれを解決、
あたかも、自身が地球を離れる前の
置き土産のようにして。
それがドラマとは言え、
過去にもこうしたトラブルに『日出男』が膾炙した経緯はあろうも、
それがエピソードとして出て来なかったのは残念。
また、ラストシーンも、ある程度予想の着く帰結も、
冒頭のシークエンスでそれを提示する必要があったかは疑問の残るところ。