「昔は昔、これからはこれから」アンダーカレント つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
昔は昔、これからはこれから
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永山瑛太演じる悟は嘘ばかりつく男であった。本人曰く周りの期待に添う人間あるようにしたらしい。
嘘を言うというのは真実を話さないということだ。
真実を話さないとは、ある意味で黙っていることと同義であるといえる。
真実を話さなかった堀、真実を押し込めて忘れようとしていたかなえ、彼らもまた悟と同じであったと見ることもできる。
何でもかんでも全てを話す必要はないと思うが、言ったほうが良いことは言うべきだろう。
もしそれで自分との関係が壊れてしまったとしても、嘘のままや黙ったままで続く間違った関係よりは良いように思える。より親密な関係を求めるならば。
なかなかアグレッシブな物語だったと思うけれど、静かな雰囲気で終始進む。まだ数本しか鑑賞したことはないが今泉力哉監督の作風かと思う。内容にかかわらず優しい雰囲気と言えばいいだろうか。
そのおかげか分からないけれど、堀がいなくならなかったエンディングは、とても良かったように感じられて、細かいことは気にならなくなるのは素晴らしい。
かなえと悟が海辺で話すロケーションがとても美しかったのも印象的。
銭湯、かなえが水に沈む夢、昔あった沼、そして海辺、多くの水が作中に出てくるが、最後の海で水に関する苦い思い出が浄化されたように思えた。
かなえと堀が前を向いて新しく生きられるといい。
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