劇場公開日 2023年10月13日

「この世界観の発想が秀逸」大雪海のカイナ ほしのけんじゃ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5この世界観の発想が秀逸

2023年10月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

幸せ

テレビアニメ「大雪海のカイナ」の劇場版。公開から遅れること1週間、やっとアマプラで全11話を視聴し、鑑賞してきました。先にテレビアニメを観ておいて本当によかったです。

ストーリーは、一面が雪に覆われた雪海で暮らす人々が、天に届く大木である軌道樹の根元にある水源を求めて争う惑星で、軌道樹の上に広がる地・天膜に暮らす少年カイナとアトランド国王女リリハが、その問題の解決につながると思われる大軌道樹を目ざすが、そこにはハイテク機器を駆使する国家プラナトが存在しており、その指導者であるビョウザンと対峙する中で、この星の秘密が明らかになっていくというもの。

テレビアニメ視聴を前提とした、一切の説明のない開幕には潔さを感じます。ストーリー的にも完全な地続きで、というより本作をもって完結という構成です。そのため、テレビアニメからのファンには、この世界の秘密があらかたわかり、ストーリーの決着を見届けることのできる納得の展開です。しかし、初見のかたには、しだいに理解できるとはいえ、なかなか厳しいスタートでしょう。

それにしてもこの世界観の発想がすばらしいです。大雪海と軌道樹の関連、そこで暮らす人々とさまざまな虫、さらに先人の残した文明の遺物が絡み、SFファンタジーアドベンチャーとして魅力的な物語を構築しています。これをポリゴン・ピクチュアズのお家芸であるCGを駆使して圧倒的なスケール感で描き出している点も、本作の見どころの一つとなっています。クライマックスは、スピーディーなカメラワークと相まってさらに盛り上がります。

ただ、テレビアニメのゆったり展開と比べると、本作はやや駆け足だったため、少々あっさりした印象を受けます。もう少しカイナやリリハに感情移入できるとよかったです。また、先人がこの地を訪れた意図や衰退した経緯、その遺物の継承、オリノガとアメロテの関係など、気になる点もそれなりに残っています。できれば、エピソードゼロ的なものやスピンオフなんかで描いてくれるとうれしいです。

キャストは、細谷佳正さん、高橋李依さん、村瀬歩さん、小西克幸さん、坂本真綾さんらテレビアニメCVに加え、新キャラ・ビョウザン役で花江夏樹さんが参加しています。一流声優を並べた盤石の布陣です。

おじゃる