「及第点だがあと一歩」映画 仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐 たくむしさんの映画レビュー(感想・評価)
及第点だがあと一歩
アクション、ギャグ、ギーツ新フォーム、新ライダーの見た目と活躍は満足できる出来だったが、設定と話し運びに関しては少々不満が残る部分があった。どうすればよかったか素人なりに考えてみたりした。
まず、序盤の四人の英寿との共闘。道長、祢音、景和、ツムリそれぞれに事態の切り抜け方で差が出ていて面白かった。道長に関してはギャグも入ってたし、新鮮な気持ちで見れた。景和に関してはどうやって逃げたのかちゃんと描写してほしかったが。このアクションの中で、「こんなのギーツじゃない!」と共通のセリフを叫ばせたのがさらに違いを強調させて評価できる点だった。
次にクロスギーツに関して。Xをモチーフにした動きの数々は見ていて楽しかった。欲を言えば必殺技発動時、武器にどういう操作をしていたのか分かり辛かった(武器を触ってるだけ)のでそこをきちんと描写してほしかった。
次に新ライダーガッチャードに関して。登場まで何をしていてたのか不明なのはまあ、お披露目のためだけなので気にしないでおく。戦い方は錬金術と言えるか首をかしげたが、バッタらしい高速移動からのパンチ(キックじゃないんだ…)はカッコよかった。機関車要素は見受けられなかったが本編までのお楽しみにしておこう。
最後にギーツワンネスに関して。皆の願いが一つになったことを表すレインボーカラーを使用し、差し色として黒を配色した見た目は最高だった。
ここらは不満点。まずは世界滅亡ゲームに関して。このゲームは世界滅亡までのRTAということは、過去にメラ/メロ以外の誰かがやってて、メラは記録更新のために英寿をわざわざ4人に分け、弱体化させたうえで神の力を手に入れたと理解している。つまり、本来は今回の手順はいらないということになる。また、神殺しの力を持ちながらこの手段を用いたということは、他の神よりも英寿は相当強いということである。では、ほかに神がいるのか?神殺しの力はどういった力なのか、本来のゲームはどう進められていたのか疑問が出てくる。最初にメラが今までどのように滅亡ゲームを遂行したのか描写すべきだった。
そして滅亡のさせ方も不可解だった。メラが世界樹を爆発させることで世界は一旦滅亡するが、なぜ最初にそれをやらずに暴れたのだろうか?爆発させるのに何か条件があるように見えなかった。
それと世界樹だが、4つに分けるのに樹じゃなきゃいけなかったのか?そもそもなんで4つなのか?も明らかにすべきだった。でないとメラが4人目を軽視する理由に納得しずらい。今回だと、じゃあ最初から3人で分ければいいじゃんと思った。
で、滅亡後オーディエンスに語り掛けるシーンには矛盾を感じた。最初メラはどうせ地球は滅びるから未来に影響はないみたいなことを言ってたが、未来人のオーディエンスは消えてしまったようだった。でもジーンは生きてた。言ったことと起きたことが食い違ってて、理解に苦しんだ。
あと、元に戻す方法をツムリはすぐ世界樹を壊すことと断言したが、なぜそう思ったのか分からなかった。ほかのみんなも当然のように納得して、置いてけぼりにされた感じがした。
さらっとジャマトに関する新情報が判明したが、誰が、何のために、どのように地球を支配した植物を怪物にしてデザグラの敵キャラにしたのか、さらに疑問が増えるだけになったのも残念だった。
ギーツワンネス登場までの流れは、私はもっとうまいやり方があったんじゃないかと思った。どうせバッファたちが実体を伴って現れるんなら、滅亡した世界で生き残らせてもよかったんじゃないかと思う。これは、劇場のみんなの願いが叶ったと強く感じられる(英寿だけじゃなくて全員生き残っててほしかったでしょう?)からいい案だと思う。さらにそこから、ワンネスレイズバックルの使い方をみんなで考えて解き明かして、最終決戦へ持ち込めば、協力して巨悪を打ち砕く構図として満点ではないだろうか?カードを違和感なくシーンに溶け込ませることもできる。
最終決戦にも少し不満点がある。ギーツワンネスの立ち回りが急に良くなるシーンがあったが、何がきっかけでそうなったのかよく分からなかった。石が転がる演出から何も読み取れなかった。
決戦後、ギーツはいつ自分の力を取り戻して元に戻ったんだろう?描写が欲しかった。また、メラとメロは強制送還されるだけでお咎めなしで、何も解決してないように思えた。未来にも指名手配という概念があるんだから、何か取り締まりがあるものだと思ったが違ったみたいだ。
以上から、満足できる点もあったが同時に不満点もあった。しかしジーンを通して観客に語り掛ける演出は番組のテーマでもある「信じ続ければ願いは叶う」を体現する良い演出だと思った。もっと構想と設定を練ればより良いものになっただろうなと惜しむ気持ちが強い作品だった。