シモーヌ フランスに最も愛された政治家のレビュー・感想・評価
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この映画を減点なんかできない
この高貴な人間性や徳を描いた映画を、映画としての良し悪しなどといったつまらぬことで評したくない。この素晴らしい人格を傷つけずにわれわれに伝えてくれただけで十分である。レジスタンスの英雄視の影で歴史の暗部としてタブー視された上に女性ゆえの差別とも戦って人権のために尽くしたこの人物の強さと心の美しさ、勇気にただただ感嘆する。
フランスでは
不勉強ながら、シモーヌ・ヴェイユについては名前を聞いた記憶しかなく、政治家である(作中本人は『政治家でない』と言ってたが)ことも知らなかった。しかもこれ程の実績を残した方だったとは。
この映画を観る限り、70年代のフランスは現在の日本と同じ状況。そこで中絶を認める法案を通す時の反応も、現在の日本で同性婚や夫婦別姓などの様々な権利を巡る議論とまったく同じ。
そうした状況をたった一人の政治家が何度も突破したことで現在のフランスの状況が勝ち取られたのだと、よく分かる。翻って日本は、カルト宗教や宗教右派が政治家たちをがっちり掴む異常な状況。とてもフランスのようになれる兆しもない。こういうことこそフランスから学ぶべきなのでは。たとえそれがアウシュビッツでの彼女の悲惨な経験(完全にトラウマになってる)によって突き動かされた結果なのだとしても。
映画としては回顧録形式で、現在のイベントと過去の経験を行ったり来たりするので若干分かりづらいが、役者達の素晴らしい演技で補強されている。現代の日本人としては是非学ぶべき一本。
見ごたえあり
苦難の人生を歩んだシモーヌが塗り変えた 『もの』とは!?
冒頭部分の中絶に関する法律を改正しようと
議会で男性議員が女性に向けられた言葉に
シモーヌを含めて女性が虐げられた実情が
あったことを初めて知りました。
ユダヤ人として生まれてきたシモーヌは
3人の子どもを育てながら、司法官として
身を粉にして、働いてきた姿に
夫も家庭にいて欲しいと思いながら、最後は
味方になってくれた場面はとても活力に
満ちていました。
刑務所での囚人の不衛生な環境を医師の
診察が受けられる体制に変えた!
シモーヌが収容所で待ち構えていたのは
飢えに苦しむ、劣悪な状況でした。
母親が亡くなる姿をただ、見ることしか
出来なかった無力さが、自分の胸に刻まれていました。
記憶と歴史、戦争と迫害。
1人の女性、人間として侵害された権利を
取り戻して秩序を護ろうとする
シモーヌの人生が描かれていました。
時系列が、ばらばらで過去の若い主人公と
歳を重ねた主人公と混乱してしまうかと
思いましたが、自分には見やすく映りました。
しのぎを削るようにして生き抜いたシモーヌに
衝撃と生還したことが未来に活かされて
良かったと思えるストーリーでした。
シモーヌ、または終わらない民主主義への夢
シモーヌ・ヴェイユの伝記的映画。よく伝記映画は退屈な代物になりがちだが、脚本家と監督の頭がよく、時系列を廃したことで緊張感を保ち二時間半を飽きさせないものとしている。
面白いのは、シモーヌ自身の伝記が、全体主義の敗北、民主主義の勝利という2000年くらいまでの歴史と同期していることである。
自身が全体主義の犠牲者であるシモーヌは民主主義に希望を託してやまない。これは、戦後のヨーロッパのみならず、とりわけ、冷戦後はアメリカもロシアも抱いた夢、もしくは希望であり、事実2000年過ぎてロシアやポーランドへ訪れた私は本当に時代が変わったと思ったものであった。今や、全体主義は過去であると。
シモーヌの幼少時代の描き方からも想像できるがシモーヌ自身非常に恵まれた環境で育ってきており、強制収容所体験がなければヨーロッパの一ブルジョワで終わったかもしれない。
民主主義を追求するには金がいる。皮肉ではなく。そしてその金はある種搾取を経て周り回るのである。
シモーヌが勝ち得たものはおおきい。女性の権利。イエス。刑務所の囚人の権利。definitely yes。戦後ユダヤ人として過去を語る権利。イエス。考えてみればなんと不自由な時代だったことか。人権なんて言葉、最近までなかったに等しい。(日本には今でも微妙)
その一方で、民主主義は格差をもたらし、結果、新たな敵を生む。全体主義は、思想ではなく、貧困と無教養の必然である。民主主義が富と知識から生まれ出るのと相反して。
ネットで拡散するニュースやデマを信じる無教養層、貧困から右翼化する若者、難民として受け入れられたものの貧困から抜け出せず宗教が認める暴力に身を晒すテロリスト。この世は相変わらず人類の醜さと精神性の貧しさを曝け出しており、情報と富を持つものと持たぬものの差は広まる一方に見える。
従ってこの映画は、面白い。
その面白いというのは以上に挙げた点を全て含み、なおかつ、シモーヌの夢と希望にその焦点が向けられるからである。
全体主義、この映画ではナチスだが、そこでの生き延びたということは、大きいが、しかし一つのエピソードである。生き延びた後、何をしたかが大事である。
日本も全体主義の国であった。わずか80年足らず前までは。そこでも人権なんか、全くなかった。ナチスの残虐さは日本兵の残虐さと類似する。権力によって補償された暴力や殺人がどこまで人類を野蛮にするかという好例である。
そして、今後また、いつ、それが起こらないとも限らない。民主主義を唱えることがいつ、「反逆行為」になるか、わかったものではない。
この映画を見て人類の行き先を考えるのも、夏にいい。
アウシュビッツの場面が辛い
類稀なる熱意と精神力
難民や受刑者の衛生にも熱心だったのはアウシュビッツの生存者ゆえ? 死の行進については後にどうなったのか知らない方が多数ではなかろうか、私も知らなかった 記録や記憶を後世に残そうとするとはやはり賢明な方である 日々生かされているとはよく云いますが、身をもって実感されたと思う 収容所も家庭でも描ききれない程他にもご苦労が有ったのではないか 御本人が生命力に溢れていたからだろうけど、母やあの親切な監視員さんもまるでこうなると分かっているかのようであった
いい政治家
「あなたは生きなければ」の言葉の重み
映画より映画みたいな人生を送った偉大すぎるこの女性は、権力のために出世したんじゃなくて、世の中を変えるために高い所に登り続けた、というか結果登ってしまった。
私は政治家ではなく法律家、という彼女の言葉にもそれが現れていると思う。
思い出す事すら辛い過去があるのに、その過去があるからこそ、今ある改善できる問題をあらゆる古い価値観と闘って弱者を助けたいという彼女の情熱と強さが凄かった。とにかく凄まじかった。
この人の「あなたは生きなければ」という言葉の重みは通常の何十倍もの重さを感じる。
ホロコーストの映画を観るたび、死ぬのは怖いのに死んだ方がマシと思えるような状況を生き抜かなければならない事に、毎度芯から心が凍る思いをしてしばらく頭が働かなくなる。観たくないけど過去を知るために観なければいけないと思う、と娘が以前話していたけど、ほんとにそれはそう。歴史に残る他の非道な出来事についても同じである。
アフタートークで彼女の行った偉業は主に三つあって、中絶合法化、ヨーロッパ議会の議長、ホロコーストの生還者なのだけど、それ以外にも保育園の制度を充実させた事などもあると伺った。
これを知っておくと、この映画のある場面が少し理解が深まると思うのでシェアさせてください。
闘った女性たちのおかげで「今」がある
深追いは出来ていないけれど…
シモーヌ・ヴェイユ、凄い人がいたんですね❣️
仏女性政治家シモーヌ・ヴェイユ🇫🇷
ごめんなさい🙏この人知リませんでした。凄い人だったんですね❣️感動しました~😭
それから、ユダヤ人迫害の描写、エグかったけど改めて興味を持ちました。いつかアウシュビッツを見学に行きたいです。
映画がどうのというより、 この人の人生に圧倒されてしまった 時代が...
映画がどうのというより、
この人の人生に圧倒されてしまった
時代が行ったり来たりする映画は分かりづらいものもあるけど、
これはわかりやすかった
いつか、フランス(やヨーロッパ)の歴史や情勢に詳しい人と一緒に見て、
場面場面で一時停止しながら、用語の説明を受けたい
映画を見ていると、
控えたい用語や地名や何なのかさえ判らない単語が沢山あった
タイトルなし(ネタバレ)
1974年、フランス・パリ、国会では人工中絶合法化の法案審議の真っ最中。
カトリックの議員が多数を占める中、法案を通そうと頑張っているのは、健康保健大臣シモーヌ・ヴェイユ(エルザ・ジルベルスタイン)。
彼女はユダヤ人ホロコーストの生還者で、常に、主流社会から顧みられることの少ない社会的弱者の立場を考えて行動をしてきた政治家だった・・・
といった内容で、映画は3つのパートに分かれています。
ひとつは、第二次世界大戦下、ユダヤ人迫害に遭った時代。
もうひつは、自伝を書くために半生をふりかえる最晩年。
そして、第二次世界大戦後から20世紀末までに至る時代(これは、いくつかの短いエピソードが綴られていきます)。
ただし、映画はそれが時代順に並んでいるわけでもなく、最晩年から振り返るという態でもないのが、観る側としては、やや混乱するところ。
もっとも重きが置かれているのは、第二次世界大戦の時代で、まぁ、映画としては、ここに力点を置くのは致し方ないところ。
冒頭で描かれる人工中絶合法化法案も予期せぬ妊娠、望まぬ妊娠を強いられた女性たちを救うためのものなのだが、その後もシモーヌは、薬物依存症者やエイズ罹患者など、主流社会から白眼視されるひとびとの人権を守ろうと活動をする。
主流社会からはみ出てしまったひとびとの人権を大切にしないのは、権力を持った主流社会側の傲慢であり、その傲慢さは暴力へとつながり、最終的には第二次大戦下での迫害へとつながる、根は同じものなのだ、と。
そう、シモーヌを通して見た第二次大戦後のヨーロッパ史でもあり、「わたしたちはこのような時代を生きてきた。君たちはどう生きるか」と問う映画でもあります。
そういう映画なので、ぜひ、若い人たちにも観てほしい映画ですね。
演出では、ワンカットの(ややフワフワした、流れるような)長回しが多く、なんだか褒められないなぁ、なんて思ったのですが、「個人の記憶の積み重ねが歴史になる」というモノローグもあることから、記憶の途切れなさを表しているのでしょう。
きちんとしたカット割りは、すでに定型化された歴史、個人から遠く離れた歴史、と監督はみているのかもしれません。
シモーヌ役は、第二次大戦時の十代後半から中年期までをレベッカ・マルデールが、中年期から晩年までをエルザ・ジルベルスタインが演じており、両女優とも力演・好演でした。
翻っていまの日本の政治の世界の現状は
相変わらずの男性社会であり、閉塞感に満ち溢れて、時々テロまで起こるしまつ。政治家のスピーチも男女問わず、やれやれなものばかり。ウクライナでは再び憎悪の連鎖が始まろうとしている。シモーヌさん、我々の世界はタイムリープしているのかもしれません。
ベッドで寝られない理由(わけ)
フランスで最も愛された女性政治家の話で幸せな映画だと思って観ました。
冒頭、フランスでは1920年に堕胎禁止法が制定されて以来、長い間違法で危険な闇の堕胎が問題に。あっこの前観たなぁ。ヴェネチアで金獅子賞を取った映画「あのこと」
1975年にこのシモーヌ・ヴェイユさんが、厚生大臣時代に男性議員たちの反対を押しきって人工妊娠中絶を認める改正法案を通したのね。
ところが、どっこいでした。
フランスのユダヤ人が主人公の映画だと最近観たのは鬼才ポランスキー監督のドリュフス事件の映画「オフィサーアンドスパイ」。でもこれは19世紀の話しですからね。
ナチスに逆らえず、自国のユダヤ人を差し出したことは自由と民主主義の国フランスの恥、汚点なのでしょう。
1970年にシモーヌの息子がヒッピームーブメントのなか、イスラエルでハーレム状態。お母さんも来ちゃえばとガールフレンドたちに言われて、心も体もわたしはフランス人だと言う場面は本当にたいした人だと思いました。
アウシュヴィッツが絡んで来るとは思わないで観たのです。
薄いブルーの縦縞の服を着た見張り係(看守)の特別な計らいで終戦を迎えられた訳ですが、ロマの話しも出てくるし、ケイト・ウインスレットの「愛を読む人」もとてもリアルに思い出すことになりました。
この人、政治家ではなく、民間人として登用された厚生大臣で、元々はフランスで女性初?の法務省の監察官なんですね。EU初の女性議長。
最後のメッセージ。
自由主義、民主主義自体は脆弱なもの。多様性に内在する危険性についても。やっぱり、大きくて強い母性は大切な指針となるということですかね。
4人の息子たちに抱きつかれるシーンでは旦那さんは文句言ってるだけで完全にアウェーでした。
まったくの余談ですが、シルヴィー・テステュー(おばさんになってからの姉役)がちょっと滝藤賢一に見えてしまいました。ひみつのなっちゃんのせいですね。この映画、エルザ・ジルベルスタインの激太りもすごいですけど、特殊メイクに近いメイクアップや若い役者さんのダイエットなんかもなかなかすごいと思いました。
こんなに正義感の強い人って居るものなのか?
それもそのはず、
こんなにも悲惨なことを目の前で自身が体験して来たことだから!
それを真っ直ぐ忖度なく、
勤勉に、弱者のために、正義感のままに進めたら、
女性初の欧州議会議長となったフランスの政治家シモーヌ・ベイユの人生を映画化。
恥ずかしながら、
全く知りませんでした。
(o^^o)
1974年、パリ。
カトリック人口が多数を占め、男性議員ばかりのフランス国会で、シモーヌ・ベイユは圧倒的な反対意見をはねのけて中絶法の可決を実現させる。
1979年には女性として初めて欧州議会議長に選出され、
理事たちの猛反対にあいながらも「女性の権利委員会」を設置。
女性のみならず、移民やエイズ患者、刑務所の囚人など、弱者の人権のために闘い続けた。
その不屈の意志は、かつて16歳で家族とともにアウシュビッツ収容所に送られたという過去の体験の中で培われたものだった。
「パリ、嘘つきな恋」のエルザ・ジルベルスタインが40代以降のシモーヌ、
「スザンヌ、16歳」のレベッカ・マルデールが10〜30代のシモーヌをそれぞれ演じた。
記憶と歴史
記憶は形がないから言葉にしなくては消えてしまう。歴史を意識する人は増えてきた、でも相変わらずアウシュビッツ(ショアー)はなかったなど言う人々がいる限り、主観の記憶とともに歴史を共有して行かなければならない。その場その時に誰が最も辛く弱い立場に居るのか、国が把握して守らなければならない。例えば留置場や移民収容所。食べ物と水と新鮮な空気。健康か病気か調べ、清潔で安心できる環境、図書館も必要だ。これが民主主義で思想立場や人種国籍に関係無く全ての人間に与えられる生存権である。この言葉を聞いて、その通りにしている!と自信を持って言える社会、国家はどこにありどこにないのか?
シモーヌは自分を作ったのは母親であると言った。シモーヌの母は夫からはシモーヌを甘やかしていると言われる。でも彼女はシモーヌの個性を愛し励ました。母は化学を勉強していたが結婚と共に学問から離れた。大人になったら働くのよ、と母はシモーヌに言う。子育てと夫のフォローでしばらく母親・妻・主婦に専念したシモーヌは28歳の時、働きたいと言った。シモーヌの夫は反対したが、3人の息子達がシモーヌに抱きついて「ママを誇りに思う」と応援した。夫も最後までシモーヌを支えることになる。
映画真ん中まではスピード感あり時間軸の交代によってテンポよく進んだ。それが途中から重く苦しく辛くなる。それがシモーヌが書いている回顧録と彼女の人生の根本だから避けられないし書かずにいられない。
冒頭のシモーヌの言葉に感動した。(正しい引用ではないが)自分のことより他人の記憶、歴史に思いを馳せたいと。映画の中で何度か言及されていたようにシモーヌはとても謙虚な人間のようだ。それが弱い立場に置かれている人の為には場を圧倒するほどの力漲る言葉を放つ。
王政を自らの手で倒したフランスの歴史と自負。彼らが「権利」「民主主義」という言葉を口にする時の迫力は欧州一だとこの映画を見て思った。一方、シモーヌが誇りに思い愛するフランスと欧州が抱える問題の複雑さ、歴史と記憶を無視する輩の存在をシモーヌは分かっている。
見るに値する映画。若い人も若くない人も、できるだけたくさんの、いろんな背景の人が見たらいいと心から思う。
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