「記憶と歴史」シモーヌ フランスに最も愛された政治家 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
記憶と歴史
記憶は形がないから言葉にしなくては消えてしまう。歴史を意識する人は増えてきた、でも相変わらずアウシュビッツ(ショアー)はなかったなど言う人々がいる限り、主観の記憶とともに歴史を共有して行かなければならない。その場その時に誰が最も辛く弱い立場に居るのか、国が把握して守らなければならない。例えば留置場や移民収容所。食べ物と水と新鮮な空気。健康か病気か調べ、清潔で安心できる環境、図書館も必要だ。これが民主主義で思想立場や人種国籍に関係無く全ての人間に与えられる生存権である。この言葉を聞いて、その通りにしている!と自信を持って言える社会、国家はどこにありどこにないのか?
シモーヌは自分を作ったのは母親であると言った。シモーヌの母は夫からはシモーヌを甘やかしていると言われる。でも彼女はシモーヌの個性を愛し励ました。母は化学を勉強していたが結婚と共に学問から離れた。大人になったら働くのよ、と母はシモーヌに言う。子育てと夫のフォローでしばらく母親・妻・主婦に専念したシモーヌは28歳の時、働きたいと言った。シモーヌの夫は反対したが、3人の息子達がシモーヌに抱きついて「ママを誇りに思う」と応援した。夫も最後までシモーヌを支えることになる。
映画真ん中まではスピード感あり時間軸の交代によってテンポよく進んだ。それが途中から重く苦しく辛くなる。それがシモーヌが書いている回顧録と彼女の人生の根本だから避けられないし書かずにいられない。
冒頭のシモーヌの言葉に感動した。(正しい引用ではないが)自分のことより他人の記憶、歴史に思いを馳せたいと。映画の中で何度か言及されていたようにシモーヌはとても謙虚な人間のようだ。それが弱い立場に置かれている人の為には場を圧倒するほどの力漲る言葉を放つ。
王政を自らの手で倒したフランスの歴史と自負。彼らが「権利」「民主主義」という言葉を口にする時の迫力は欧州一だとこの映画を見て思った。一方、シモーヌが誇りに思い愛するフランスと欧州が抱える問題の複雑さ、歴史と記憶を無視する輩の存在をシモーヌは分かっている。
見るに値する映画。若い人も若くない人も、できるだけたくさんの、いろんな背景の人が見たらいいと心から思う。
今晩は
コメントありがとうございます。
今作は、見応えがありましたね。
思わず、シモーヌさんの生涯をスマホで見ながら鑑賞してしまいました。凄い人が居たモノです。では。