「理想と現実のギャップ」シック・オブ・マイセルフ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
理想と現実のギャップ
この作品で一番重要なところは、何度も描かれる主人公シグネの妄想と、現実が剥離していくことだろう。
注目を集めようと薬物摂取により皮膚疾患に陥るが、そのことでシグネが期待する結果は少々過剰だ。しかも、シグネ自身の能力を大幅に越えたものまで存在する。自身の能力を過大評価しているのだ。
さすがにそうはならないだろ、というレベルの妄想の連続は、ある意味で恐ろしい。薬を飲み続けることよりもコチラのほうがホラーなのだ。
自分が注目されないのは、環境やチャンスや周りのせいなどではない。単純に自身の能力不足、あるいは活かし方を間違っていることに全く気付かない。
しかも、病気になるリスクを全くといっていいほど計算に入れていない愚かさまである。
シグネは友人や恋人のささやかな成功を、些細なことと貶すが、彼らは自身の能力により得た成功であり、根本的にシグネとは違う。こんな簡単なことさえ分からないシグネに現実など見えるはずもない。
作品とは直接関係ないことであるが、観ていて気付いたことがある。ここ数年話題の、自分の愚行をSNSに上げる行為についてだ。回転寿司の醤油差しをなめたりするアレね。
彼らは簡単な善悪の判断も出来ないバカなのだと漠然と思っていた。しかし実際は善悪の判断はついていて、悪いことだからSNSに上げているバカなのだと気付いた。
自分と彼らの感覚が離れすぎていて、少し考えればそうだよなということに今まで気付いてなかった。
まあ、そんな奴らのことを深く考えたりしないからね。
コメントする