「現代人にとって決して他人事とは思えない突き抜けた異色作」シック・オブ・マイセルフ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
現代人にとって決して他人事とは思えない突き抜けた異色作
ノルウェーから届いたこの異色作の主人公は、「私に注目して!」という思いが誰よりも強く出てしまう人。それゆえ恋人や友人らが注目を集めているだけで気に食わないし、どんな手段を使ってでも望み通りの境地に立とうとする。すなわち、本作のテーマは現代人の多くが身に覚えのある「承認欲求」について、ということになろうが、しかしそこから予想されるSNSの承認機能を使った「いいね」合戦には決してならない。あくまで現実社会を舞台に、顔と顔を合わせた場所で「もっと!もっと!」が発動していくのが面白さというか、事態の深刻さというか。この自我の暴走ぶりや自己破壊を不快に感じる人もいるかもしれないが、でも危ない橋をどこまでも渡っていくヒロインの突き抜け方やその代償、決して安易に人を糾弾するような展開には陥らない構成、小気味良い会話のテンポ感を失わない脚本の妙なども相まって、興味深い”人間探求”的な一作に仕上がっている。
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