「Funeral」シック・オブ・マイセルフ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Funeral
最近増えつつあるインフルエンサー、もしくはそうなりたい人が承認欲求を拗らせて暴走する系の作品、直近で観たものだと「DASHCAM」「#ミトヤマネ」と国内外問わずそういう作品が生まれてきています。特に「DASHCAM」はそういう人の成れの果てのような姿をこれでもかと映し切っており、そこにホラーも加えるという暴れっぷりには一周回って拍手を送りたくなりましたら、「#ミトヤマネ」はとても中途半端で、日本ではそれ以上のことをしでかす輩がニュースで世間を騒がしてるのもあって、フィクションが現実を超えられてない感じがしていました。
そんなところに自傷行為で注目を集めようとする作品が登場という事で、それは見に行かなきゃという事で鑑賞。ボディホラーなのかと思いましたが、基本的には注目を集めるための行為なので、顔面の崩壊っぷりはそこまで期待しない方がいいです。
この作品、主人公のシグネと彼氏、この2人の普段の過ごし方や他人との接し方に問題があり、彼氏は流石に構わなすぎだし、人の目を気にし過ぎて無意識に自分中心になってるダメな人。
シグネは注目を集めるためならばどんな手段も厭わない本当に危ない人。血まみれのTシャツで街中を闊歩しますし、犬に噛まれようと犬を挑発したりしますし、アレルギーを持っているかのような行動をしますし、挙げ句の果てには違法薬物に手を出して皮膚が爛れてしまったのに、それに対しての注目で喜んでしまうというイカれっぷり。
シグネはそもそも話下手なのか見栄を張った後の対応が杜撰すぎたのもあって見ているのがとても痛々しかったです。何も考えずにとりあえず注目を浴びたい一心で行動しているので基本的に彼女のみ得をしているようで良い意味でイライラさせられました。
印象的だったシーンとしてシグネの人生の最高到達点が葬式だったというところです。生きてる時の功績や誰かとの協力で手にした成果よりも、自分が死後にどれだけ多くの人に讃えられて、死を悔やまれているかという妄想にふけっているシーンは衝撃的でした。妄想の中でも父親や見舞いに来れなかった親友を突き放して気持ちよくなっていたりと、本当に自分中心で動いているなとこれでもかと伝わってくるシーンでした。
顔や体に怪我を負ったり病気をしてしまった人々が集まるセミナーみたいな場所でも自己顕示欲全開で自分の事、彼氏のことをぺちゃくちゃ喋るので案の定追放されますが、やはり同じ立場で無いと喋りたくないというセミナーの面々も凝り固まった考えではあるなと思いました。
同じ立場になって話し出したら聞き入ってくれるというのも、偉ぶってる人も蔑んでる人も受け入れずに同じ悲しみを背負ってる事が必須条件というのもまぁなんと残虐なんだろうなと思いました。
シグネは妄想癖が激しく、現実でどれだけ大変な事になっていようとその妄想にふけっている時だけは自分を保ててそうなのがキツい描写ではありますが、自分も大小問わずあぁすればこうすればと妄想する事はあるので、成功体験のような妄想は自分を見ているようでもどかしくもなりました。
現代のSNSでも注目を集めたいがために炎上まがいの行動をしたり、虚言で人々を翻弄させたりとそういう目立ちたがりが多く蔓延っています。シグネはその最終形で行動に移して他人にも自分にも迷惑をかけるやらかしっぷり、それに対してもっと大きな罰が下ればなと思っていましたが、終わり方はあっさりだったのは残念でした。
インフルエンサーの闇をこれでもかと描いていました。もう少しインパクトが欲しかったかなというのが本音ですが、人となりや普段の過ごし方を見直すには十分な作品だなと思いました。
盗人アーティストってなんなんだ笑
鑑賞日 10/19
鑑賞時間 10:00〜11:45
座席 D-1