「"後悔"」岸辺露伴 ルーヴルへ行く いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
"後悔"
原作は未読だが、ネット上でネタバレサイトが多いので、敢えて閲覧せずに観賞
勿論、本編の方はリアタイ直撃世代なので主人公も存じ上げているし、NHK番組は欠かさず視聴済 でも、"スタンド"の実写化は陳腐とは言え、その時代のジャンプ読者だった自分からすれば、やはりあの表現は心時めくモノがある 一連のシリーズだと、所謂特殊能力として唯一無二の存在となっている主人公として、物語の広がりがそろそろ限界なのではないだろうかと老婆心ながら感じるのは、お節介の極みなのだろう(苦笑
今回はルーブル美術館でのロケなので、世界最高峰のアートに囲まれての絢爛豪華なサスペンスかと思ったのだが、そこまで彼の地を必要不可欠としているストーリーなのかと言えば、少々首を傾げる 勿論、下からの天井を見上げる壮大な天井画の撮影や、ルーブルの外観の広大さは、テレビよりもスクリーンに映える煌びやかな背景なのだが、実際のストーリーはそのバックヤードでの倉庫での舞台が第一のクライマックスである なのでフランスパートの必然性を正直感じられなかった自分とすれば、日本パートのあの元旅館の下宿や、ご神木のある場所、山村仁左右衛門のストーリーシークエンスの第二のクライマックスの方が日本ならではの陰湿とした雰囲気を帯びつつ、世界観を充分堪能出来たのである 原作に乗っけたネタは、ルーブルに行く一つのフックとして機能していることは良く出来ているのではないだろうか 問題は"蜘蛛"のメタファーが難解である 仁左右衛門も妻もダイレクトに蜘蛛に通じるエピソードがない 単なるイメージとしての蠢く奇怪な物体という印象のみで、これは蛇足だったのではと思うのだが・・・
そして、何よりも何よりも、一連のシリーズに於いて、音楽の菊池成孔に於ける、今作品のぺぺ・トルメント・アスカラール+長唄+インドネシア音楽の融合に、一番の幸福を堪能させて貰った作品でもあるのだ
もし、今シリーズに菊池成孔が加わっていなかったとしたらと思うと、寒気すら覚える、そういう意味でフランス語堪能な彼が今作に携ることはこれこそ邂逅だろうと強く感じる
"過去" "罪" "後悔" 人間の業をアートに昇華する、普通の生活とはかけ離れたその世界観に誘う作品として大変満足を頂いた次第である
1回しか観賞していないが、その後、ぞくぞくとレビューがアップされているのを拝見していると今作に対する色々な距離感の人達の感想を興味深く感慨に浸っている
自分が制作した訳ではないのにw
大まかに分けて、原作ファン、NHKドラマファン、本作のみ観賞だが耽美サスペンスファンにカテゴライズしてもいいと思う
幸運だったのはそのどれも本作にそれ程減点要素を付けなかった点だと感じた 勿論満点はないのだが、それぞれの視点が及第点をかろうじてチョイスしたことに今作の成功例を提示できたのではと思う 改めて原作、しかも本筋を読むと、ほんとに方向性の逸れた出来映えだと思うのだが、そもそもスピンオフ作品故、そういう色々な思惑の中で偶然にピースが嵌ってしまった偶然性をゲットした幸運さを今作に鑑みた
原作の強力な世界観、しかしそれを利用とする次世代のクリエーター、そして幻想的世界観を欲す消費者 多分、これはカオス理論といえば安易だが、そういうタイミングの妙を感じざるを得ないムーブメントだと結論付けるのは、安易だね(苦笑
スタンドは、自分に使えない制約が会った気がするんですが、作者はルール変更できるので問題ないですよね。😂
いぱねまさんが、おっしゃるように菊池成孔の音楽がないとこの作品は成立しないと思います。目をつぶっていても情景が浮かんでくる旋律でした。
あー、やはり蜘蛛の体液?のようなものだったのですね。そうだろうとは思いましたが、説明が無かったのでイメージというか象徴的なものとしての蜘蛛だったのかと勝手に解釈していました。
やはり原作を読まないとダメなのかなぁ。
「見てから読む」か「読んでから見る」か…懐かしいキャッチコピーですが、未だに難しいところです。
熱いコメントありがとうございました。もしよろしければ私のレビュー欄ご覧ください。ルーブルは確かに限定的でしたし、蜘蛛は🕷️よくわかりませんでした。下宿と仁左衛門さんの話はいい感じでした。おっしゃるとおりの人間の業作品でした。シロウト的にはモナリザが天井絵画と並んで眼福でした。😊😊😊
確かにあの虫の説明がなくてわかりづらかったですね。
原作では、仁左右衛門が採取した樹液の黒はあの「蜘蛛のようなどす黒い生物」の色で、この顔料で描いた絵に近づくと、そこにこもった仁左右衛門の怨念とその生物が一体化して動き(つまり実体はないのでしょう)、人の心に罪や後悔の記憶を見せて攻撃する……との説明がされています。
絵の怨念を象徴的に表す存在なので省略できなかったのかもしれませんが、説明が省かれると雰囲気キャラみたいになってしまいますね。
人間の業をアートに昇華するという表現、このシリーズの特性を端的に表していてなるほどと思いました。