「長尺は不向き?」劇場版 SPY×FAMILY CODE: White にょむさんの映画レビュー(感想・評価)
長尺は不向き?
アマプラ視聴でアニメを観て、楽しませてもらっていたのでかなりの期待をしていました
まあ面白かったは面白かったんですけど、安牌というか
オリジナル脚本という事で、原作逸脱出来ないのは察しますが、巧妙にすれ違う勘違いで描く家族喜劇としてはTVアニメの焼き直し
いっそ原作者がもっと絡んでくれれば違ったかも?と思わせる位には公式の二次創作感ありました(;´д`)
作画、動画は丁寧に作られており、そこら辺の不満はないです
チケ料金分は楽しめると思います
ただ、ファンとして言いたい事は多々あります(^^;;
映画冒頭で家族の説明、能力の説明、それをお互い隠している事が説明されるのですが…
この作品を映画で初めて見る人の為に付けたようですが…そんな人が何人いるの?って思いました
そういう意味ではファンムービーですらない感じです
そもそもスパイファミリーの作品の面白さの"掴み"って、本編の物語冒頭で明かされていく登場人物の能力、正体、家族を作る動機、だと思うんですよ
これは漫画から入った読者もアニメから入った視聴者も同じだと思うんですよね
この設定を引きずっていくからその後の展開が笑えるのであって、シリアス設定はスパイスであり、だからこそロイド達の目的はドノバンの暗殺ではなく、対話による和解な訳です
なので、もしどうしてもというなら仕立て屋で出会ったくだりのシーンを挿入するか、類似の展開を新たに描写する必要があります
そんなに尺もとらないでしょうし
今回の映画では、アーニャが学校の調理実習で作るお菓子、メレメレの実物を食べに行こうという家族旅行の最中に、家族で事件に巻き込まれるという展開
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今回、個人的に躓いたのはヨルの立ち位置です
ヨルのロイドに対する嫉妬?は、すれ違う勘違いとして機能する筈でしたが、ヨルの主体性としてロイドへの気持ちが確定していないので空回りなんですよ
ラブコメ的にはヨルの気持ちは"ロイド大好き"です
なので、異性に対する"好き"を未だ知らないんだな、とか肯定的な解釈は幾らでもできますけど、基本は喜劇なので目的は恋の成就ではなく、気持ちのすれ違いによる笑いです
フィオナが純粋(妄信的)にロイドが好きなのは、過去エピソードで動機がハッキリしているからブレがないし、まあがんばれと思う
ヨルの場合は動機が分からない
いっそ"そんなつもりは毛頭ないけどこのアットホームな幸せを手放したくない"位の悪女スタンスで割り切っているというモチベーションの方が、すれ違う勘違いにしても妻の座を奪われたくないという動機が成立するし、まあがんばれとは思う
「本当はロイドの事が好きなんだよね?」という初々しさにワクワクさせてくれる少女ではないし
「独身は不味いから」という理由でした偽装結婚にいつの間にか本気になりましたというなら、その"切欠"位は見せてくれないと、応援しようという気持ちにもイマイチなれない
むしろ喜劇の設定の域を出ないで、ヨルはすっとぼけた脇役に徹してくれていた方が面白い話が出来ると思う
(アーニャの母としての立ち位置を描くエピソードはTVアニメでも面白く機能してるのに、ロイドの妻としての立ち位置を描くとたちまち停滞する)
劇場版クライマックスバトルもそれ用に登場させたタイプFに苦戦
床にひいた口紅の描線に引火させて"対戦相手が燃え尽きるような業火"なんてあり得ないし、決着としてスッキリしない(^^;;
印象として一番ノリノリで描いてたのは、うんこの神様のシーンではないでしょうか?
(*'▽'*)