「もがきがんばっている人は美しい」死体の人 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
もがきがんばっている人は美しい
頑張っていれば夢はかなうなんて大ボラを信じている大人はほとんどいない。頑張ってもかなわない夢がそこら中に溢れているからだ。だから好きなことで夢を追いかけて、もがきがんばっている人は物語になる。でも、そこには美談だけではない。嫉妬や将来への不安、親への申し訳なさ、そして自分の才能への自信の揺らぎ。
だからこの映画はとても胸に響く。売れている後輩、心配する両親への感情はもちろん、デリヘルで呼んだ女の子に自分の仕事を明かせないところも含めて、俳優として悩みもがいている姿が描かれる。大事件が起こるわけでも、どんでん返しが待っているわけでもない。でも、うだつの上がらない彼らの希望を感じることができる終わり方だった。それでも夢は必ずかなうとは言えないが、少しでも近づいてほしいと思う。
親子の関係性をうまく盛り込んでいるもうまい。ひろしの部屋でカナちゃんが叫ぶセリフは、母親としての思いが伝わる感動のシーンだった。それにしても唐田えりかはよかった。何も考えていない風俗嬢のエロさ、ダメなバンドマンの彼氏に恋する切なさ、子どもを守ろうとする強さと温かさ、どの演技も印象に残る。もっと他の作品で見られることを願う。
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