「月から太陽へ」キングダム 運命の炎 ちゃーはんさんの映画レビュー(感想・評価)
月から太陽へ
真っ暗闇に浮かぶ朧気な光。
全世界を照らす眩い光。
誰かに照らされないと光ることができない人間が、自らが光となり、誰かを照らす光となる物語。
冒頭、少しだけ雲にかかる満月とは言い難い月のシーンから始まる。
圧倒的な太陽に照らされているからこそ光ることができる月ではあるけど、
真っ暗闇にぼんやりと浮かぶ月を見て安心する人もいる。
太陽は眩しすぎて直視できないけど、月はずっと見つめていられる。
エイ政にとって、紫夏は月だった。いつもいつでも、真っ暗闇にぼんやりと浮かぶ希望。
紫夏にとっても、エイ政は月だった。お互いがお互いに月であり、太陽だった。もう2度と出逢うことのない太陽と月のように、それでも、照らし合う。
エイ政は太陽にならなければならない。星々を、大地を、1人の人だけでなく、全てを照らす光にならなければならない。
前半は、アモンの「ちゃんとした王になれ!」が最高でした。泣かせつつ笑わせるというか。
原作と比較して。
まず第一に思ったのは、竜川、似すぎ!!笑そして、強すぎ!!笑
1人で1000人くらい倒したんじゃないのか?
それと、山本耕史、片岡愛之助、山田裕貴、完璧すぎるほど最高の配役でしたね!!
原作原作とうるさいと思われるかもしれませんが、少し残念だった面を。
原作の良さは、熱さと台詞の強さです。俳優の素晴らしい演技により、熱さは十分に表現されていたのですが、台詞の強さが生かされていないような気がしました。
飛信隊が百人隊として作戦を実行する時の作戦を伝えるのは、えんさんがよかった。
えんさんの副将としての知略と知識を、信が最も認めているからこそ、飛信隊のメンバーもえんさんを認めているわけで。それが今後にも生きてくるわけで。
映画の尺として、初見の人にとって登場人物を際立出せる人を多くできないのは仕方ないとしても。
それと、尾頭の台詞がないのも残念。
「あいつが切るたびに力が湧いてくる!俺らの大将が敵をぶった斬るたびに再び全身に力が漲る!!!」
信が、飛信隊の精神的支柱である大切なシーン。
1番残念だったのは、ロエンとエンさんとタクさんという飛信隊の縁の下の力持ちとも言える3人の言葉からの飛信隊分裂のシーン。
特にタクさんから信への台詞の後のエンさんの台詞。
「でもさすがに信殿の元伍長。これで信殿は、いける!」
それと、ようやく敵の中を抜けたと思ったら逃げられて、相手の騎馬隊が来たら、全員やられてしまうという時の尾平の台詞。
「い、いけ。信。お前とキョウカイなら抜けられる。いけ!いけ!っつてんだろバカ野郎!お前はここで死ねねぇだろうが!天下の大将軍になるんだろうが!」
夢を語るのはいいけど、その夢の為に、犠牲になる人やもの、時間、心などがあることを信が感じた大切なシーン。そして、信はいかなかった。そうまでして、仲間を犠牲にすると分かっていながら、いけなかった。これも大切なシーン。
「大将首はお前が獲るんだ、信!」もないし、
「生きてるやつも死んだやつもみんなまとめて100当分だ!」もないし、
「仲間か」もない。
極め付けは、「殿の飛矢が届くぞ」の言い方と演出も残念でした。
それでも、おもしろかった。原作と比較するだけならもっと低いけど、一つの映画作品としておもしろかったので、4.0とします。