「紫夏の母性愛と王騎の父性愛」キングダム 運命の炎 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
紫夏の母性愛と王騎の父性愛
中国の春秋戦国時代。秦国王・エイ政と天下の大将軍を夢見る信が中華統一を目指す物語の第3作。今回は、前半は過去に遡り、エイ政が中華統一を目指す理由を描く静の章。後半は秦と趙との壮絶な戦を描く動の章。前半が奏功して、大人味の効いた作品になっている。前半は闇商人・紫夏役の杏、後半は秦の総大将・王騎役の大沢たかおが作品を牽引している。
魏との激戦を終えたばかりの秦に趙が攻めてくる。エイ政は伝説の大将軍・王騎を総大将として応戦する。王騎はエイ政が中華統一を目指す理由を問う。エイ政は過去の紫夏とのエピソードを語る。一方、信は秦軍の100人隊・飛信隊を率い、別動隊として、敵将を狙う・・・。
前半の静の章に味わい深さがある。趙に捕らえられ、失意の日々を過ごしていたエイ政は、趙脱失の命を受けた紫夏から、強く生きることを学び再生する。紫夏役の杏のエイ政への使命感ではない、母親のような母性愛を感じる献身的な演技が胸を打つ。涙が溢れてくる。紫夏は命を懸けてエイ政を守り抜き趙から救い出す。彼女は、人は受けた恩を誰かに返していくものだと呟く。エイ政はこれまで多くの人に恩を受けてきた。それらの人の恩を返すのが中華統一だと王騎に語る。恩の受け渡しは今日に至るまで脈々と続いて人間が強く生きる原点になっていると推察できる。
後半は、秦と趙の戦いであり知略戦。軍勢の配置、動かし方で形勢は一変する。広大な戦場での戦闘は、圧倒的な迫力である。スピード感も申し分ない。しかし、第2作と類似したシーンがある。今後のシリーズの中で、既視感のない合戦シーンは課題だろう。
ラストシーン。飛信隊は、敵将本陣に秘かに近付き本陣付近が手薄になった時、一気に本陣を攻撃し、信が敵将を倒す。秦軍は歓喜に沸くが、総大将を倒さなければ戦いは終わらない。
信は王騎の父親の様な愛の鞭、父性愛で成長した。エイ政は紫夏の母性愛に救われ成長した。成長した二人の若者が総大将に挑む次回作に期待したい。
キングダムはみかずきさんにとっても贔屓シリーズになってきつつあるようで、何よりです。
王騎将軍の信に掛ける責任の重さには驚きますが、それなりの作戦を考えての一手であることが明かされて、なるほど!と納得させられるのが、マンガ的ではありますが、エンタメとして優れた点と感じました。
前半は、設定にしては杏さんが若々しく、一方の秦王が大人っぽく見えてしまうので、母性愛なのかちょっとした恋心なのか曖昧に思えてしまいましたが、泣けるのは確かです。
冒頭シーンで秦王が月を見ていたことを思い出すと、さらに味わいが深いですね。
インディ→MI→本作と、ここのところ好みジャンルのアクション映画でハズレなしです。
料金の値上がりは懐に厳しいですが、多少は劇場への興味が戻ってきたような手応えがあります。
爽快な作品鑑賞で不快指数を吹き飛ばしていきたいですね。