君たちはどう生きるかのレビュー・感想・評価
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夢
千と千尋の神隠しのクライマックスとその感動を今でも覚えている。
その川の名はコハク川・・・
コハクがわたしを浅瀬に運んでくれたのね・・・
もし千と千尋~を見ていない人にそのクライマックス部分だけを見せてもなんのことか解らないだろう。
千尋とハクがスカイダイビング状態でかわす会話に感動できたのはそこに至るまでのストーリーを見てきたからだ。
あたりまえである。
君たちはどう生きるかを見た印象は「知らないアニメ映画の感動的なシーン集」だった。
観客には何がおこっているのかわからないのに眞人とヒミは突如としてクライマックスをやっている。
いきなり感動的なシーンを見せられると案外いらいらするものだ──ということがこれを見てわかった。なんならすこしむかつく。
このむかつきは映画ぜんたいがセルフパロディに見えることにも起因している。
どのキャラクターにも既視感がある。男勝りの鉄火女キリコはエボシやりんやクシャナの路線である。眞人はアシタカでヒミはソフィーである。ワンパターンとは言わないがいずれも宮崎駿が今まで扱ってきたヒーロー像・ヒロイン像を踏襲している。それが悪いと言いたいのではなくセルフパロディに見えるという話である。なぜセルフパロディに見えるのかというとストーリーが見えないからだ。
したがってもっと言えば「宮崎駿の熱烈なファンがつくった超精巧な宮崎アニメあるあるシチュエーション集クライマックス編」。
眞人は『ひみは生きてなくちゃだめだ』と言うんだがその劇的な台詞に観客は追いついていない。追いついていないのに眞人とヒミは千尋とハクのスカイダイビング状態時のような会話を繰り広げている。
わらわらが空へ登っていくときペリカンの群れに襲撃され「みんな食われちまう」とキリコが叫ぶんだが、こちらとしてはまだその白いのにシンパシーをもつには至っておらず、タイミング悪すぎんだろ。もっと上手に昇天しろや。と感じても罪はない。
ものすごく巧いあるあるを見るのと同様に眞人は過去の宮崎駿のキャラクターを想起させるセリフまわしやしぐさを数え切れないほどやる。ただしそれらはみんなハイライトシーンでの劇的な台詞まわしやしぐさなのだ。が、観客の気分はハイライトではない──わけである。
ただしストーリーがまったくわからないわけではない。
あまりにも大きな悲しみを負ったとき人は防御本能がはたらいて観念へ入り込む。そこからは不思議の国のアリス構造になっていてうさぎの案内人をここではアオサギがやる。壮大な夢おちといってもいい。ようするに眞人が母の死を克服する──だいたいそんな感じの話であろうことはつかめる。
が、チュートリアルしないでゲームをしている感じ。それもわりと難しいゲームでじぶんが何してんのかわかんなかったりする。
にもかかわらずヒミは「石がおこってる」とか「ドアの取っ手を離したらだめ」とかいろいろとその世界の特長的構造のことを言うし、なんならドアに近づきすぎて倒れるが、つうかヒミさんて言ったっけね、夏子さんの関係者なんだっけ。いや、おれらなんでふたりでがんばっているんだっけ。・・・。
──という感じでこっちは相関性も話も生煮えなのに、ぐいぐいと「あるあるシチュエーション集クライマックス編」を食わされる。
難解なのではなくもともと漠然としたものを漠然としていることを知った上で出している。なぜそうするのかというと、そうしたかったからでもあるし、漠然としたものを投げてみることができる作家だから──でもある。みんなだって、なんなのか解んないのに、ただ宮崎駿がつくったというだけで、これを買ったんだ。
そうはいっても絵やアニメはいい。
個人的には冒頭がよかった。火事だといって跳ね起きてだだだだと階段をかけおりて、その躍動がすごかった。もののけ姫のドキュメンタリーで宮崎駿がポーズを考えているところを見たことがある。アシタカがすべり落ちるところで腕を十字にするところがあったでしょ。草木が生い茂っているところをあるていどスピードでずざざざと落ちていくから腕を十字にして頭を防御するんだ。それを宮崎駿が自分でやってみてこんな感じだろとか言っているんだ。そういうアニメキャラへの魂入れはやっぱすげえなって思った。君たちはどう生きるかの冒頭見てあのじぶんでポーズしてみている宮崎駿を思い出した。
特長は蝟集と鳥。うじゃうじゃ恐怖症と鳥恐怖症にはつらいだろう。アオサギは醜悪を隠さないし狙ったようなグロテスク描写もあった。まったく子供向けではないと思う。が絵やアニメはよかった。
黒澤明が夢をつくったときに似ている。黒澤明が夢をつくったとき多くの映画ファンが「おれたちは用心棒とか椿三十郎みたいなのを望んでいるんだ」と言って受け容れなかった。しかし用心棒とか椿三十郎みたいなのが見たいって、そんなん当たり前でしょ。黒澤明は枯淡へ入って軸足のちがう映画をつくったんだよ。夢自体は悪い映画じゃなかった。八月の狂詩曲もまあだだよも悪くなかった。
これも単体でみたらすごい技術が集約されている。たしかに「おれたちはもののけ姫やナウシカや千と千尋の神隠しみたいなのを望んでいるんだ」と言いたいかもしれないが宮崎駿も枯淡へ入ってざっくりした夢を披露した──ってことなんじゃなかろうか。
シェフ・ミヤザキの問題作
ジブリは国民食だ。
例えるならラーメン。毎年金曜ロードショーで繰り返される『天空の城ラピュタ』や『風の谷のナウシカ』はなじみの中華料理屋の一杯。渦巻き模様のどんぶりで、メンマ、ナルトが乗ってるような。
設定もりもりの『千と千尋の神隠し』は背脂たっぷり二郎系ラーメン、結核妻の横での喫煙シーンで物議をかもしつつも昭和男のナルシズムを描き切った『風立ちぬ』は激辛蒙古タンメン中本といったところだろうか。
今回は一体どんなラーメンを食べさせてくれるのか......
巨匠宮崎駿......
のれんをくぐって出食わしたのは、創作フレンチのような傑物。
一つ一つの素材は美味しい味がするが、一向に食べ方がわからない。全体としてこれは何という料理だったのか、名前もわからない。シェフのネームバリューがあるので、まずいとは言い出せない。食べ方がよくわからなかったが美味しかった気がする、なんて無難な感想を持ちながら劇場を後にする。
また別の例えをするなら、事前情報なしに初めて蟹を食べようとしたときのような。細かくとれたほぐし身はおいしいが、全体としてどう食べればいいのか正解がわからない、的な。
料理の仕方か、
食べ方の説明があれば、
もっといい映画になったんじゃないかなあ、という作品。
なんとなく惜しさがあるような。
とりあえず、ごちそうさまでした。
でもごめんなさい、星は2つぐらいです。
監督からの挑戦状、評価され試されてるのは私たち
今日鑑賞してきたので感想を書きたいのだけど、正直この作品の感想を書くのはめちゃくちゃ難しいなと感じています。
何故ならこの映画は今までにないジャンルのもので、絵本の見た目をした、自伝であり、エッセイであり、遺書であり、告訴状でもあり、挑戦状でもあるという特殊な物だと思うからです。
特に挑戦状としての意味合いが強く、この強いテーマが先にある分、ストーリー性や娯楽性という物は薄味になっている気もするし、監督の精神世界に入り込む様な展開のストーリーなので、どうしても不安定で混沌とした描写が続いたりもします。
でも、彼が今何に悩み、何を思い、何の為にどうして引退するのか、誰に何を伝えて残したかったのか、それを知る事ができる作品である事は確かなので、ファンの私としては見る事ができてよかったと感じています。
特に異世界のお墓の門に書かれていた「ワレヲ學ブ者ハ死ス」という言葉にはハッとさせられました。意味を知らない人は是非検索して見てほしい。どんな後継者を望んでいたのか分かります。
こういうたくさんの謎かけと隠されたメッセージが随所にあるので、宣伝無しにしたことも含め、「今回の作品は分かろうとしない人には伝わらなくて良い、分かろうとする本物のファンだけに伝えよう」という頑固な部分があらわれていて、駿さんらしいなと思います。
ちなみに、私は駿さんと鈴木プロデューサーとの友情の成り立ちが知りたくてこの映画を見に行った所があったのだけど、その部分に関しては割と詳しく描かれていてよく理解出来ました。
大嫌いでウマも会わないし、憎んでさえいるのに、一番自分の事を理解してくれていて、一番長く一緒にいて、一番辛い時に助け合った仲間を手放せない、そんな気持は私も経験があるのでよく分かります。
劇中ではアオサギという役で出てくる彼ですが、とてもズル賢く、まるで主人公の半身のように真逆の特性を持ち、主人公の苦手な事をこなしてくれる様な存在です。
他にもスタッフやファンや息子さんやジブリの他の監督等も動物に姿を変えて出てきています。
その辺を誰なのかと予想しながら見ていくのも大変楽しい作業でした。
毎日をただ丁寧に、積み重ねる。
製作期間7年と確か、聞く。
しかしながらちょうど、今、この時にマッチするようなモチーフがちりばめられ、まるで昨日おとつい、作られたのでは? と疑いたくなるほどだった。
戦争も、複雑な家庭環境、その母子、父子、居場所のなさ、自傷自罰的行為と子供。もしかしてマルチバースも?
マルチバースは別格として、いつの世にもあるモノなのかもしれないが、どうしても目がいって仕方なかった。
表面的には異世界を冒険するファンタジーである。
そこには救出すべくヒロインがおり、仲間が現れ、出会いと別れが織り込まれ、ピンチと決断に満ちる。
だが一方でどうしても監督自身についてを巡らせずにおれず、
大叔父が長い月日をかけ、一つ一つを積み上げて創り上げた石を中心とした世界こそ「会社」、もしかすると「ジブリ」そのものではないのだろうかとうがってならなかった。
そこに継がせたい者はおれども、自分にはふさわしくないと、自身の世界を生きる事を宣言されるなど悲しすぎ、
創り上げた世界すら、すぐに積み上げることが出来る、と功を奏するあまり本質を見誤った内部者に崩壊させられ、そんなのないよ、と悲しみのあまり熱が出そうになった。
だとしてもう諦めるしかないのは、人生には終わりがあるからで、
だからこそ大叔父も、袂を分かつこととなった主人公へ毎日、少しづつ積み重ねて行く事だけは忘れるな、とメッセージを託している。
それでいいのか。
判断の是非を自身へ問いかければこそ、肯定を求め、根源であり存在理由の「母」は登場することとなったのではなかろうか。
きっと優しく、間違ってないよ、と言ってもらうために。
ああ、やっぱり切なさのあまり熱が出る。
はたして「君たちはどう生きるのか」。
自分たちの手で再び創るしかなくなった現状にお手並み拝見。
問いかけ、挑戦し、おそらくいくばくかの期待をよせていると思いたい宮崎監督の、厳しさが優しい眼光が目の前に浮かび上がって来るのである。
いや、私にはそう見えた。
そして同時にこれを色々なモノに置き換え、なら、わたしたちはどう生きるのか。
手品のように、全てが一度に変わることなど崩壊への序曲なら、
やはりひとつづつ丁寧に、毎日を丁寧に、積み重ねていくほかないと、
心に沁み込ませるほかなく。
最後かもしない監督からのメッセージを握り絞めるのである。
それって、当然のことなのだけど。
追記)
宣伝しなかったのは、一般のお客さんへ向けてつくった作品ではない、という意味ではなかったりしないのかな。
そうおもうと、毎日コツコツ積み重ねは、手書きセルのことで、一気にバババっとやって潰したインコが象徴するのは、3DCGとかコンピュータ技術のたとえでは。。。うがる。
傾倒して本来の姿を失い、バランスを崩して塔は崩壊とか深読みしてしまう。。。
「君たちはどう生きるか」鑑賞。駿の狂気。創造主の脳内を覗くのは稀有...
「君たちはどう生きるか」鑑賞。駿の狂気。創造主の脳内を覗くのは稀有な体験で有り、理解出来ないのも仕方無し。好みの映画か?と聞かれると返答に困る。
何故解らない事を楽しまないのか
眞人が自己と向き合い成長していく、過程を緻密に描いた神がかり的な内容と私は捉えた。
ユングの集合的無意識に象徴されるようなキャラクターに挑み、協力し、乗り越えていく。
それが芸術作品のような書き込みの背景美術にくわえて、圧巻の生命体や自然物の有機的な動きで生理的感覚に訴えてくる。石ですら生きている。
ミレーやマグリットといった絵画のオマージュや、監督の今までの作品なども次々と出てきて、目を離す隙がない。
どれだけ膨大な時間を使って仕上げているのだろうと思っていたら、エンドロールに名だたるアニメーターやアニメスタジオが作画協力などで並んでいて鳥肌がたった。
これは…と思い2度目はIMAXで観た。
アニメーションの語源anima(魂)を感じた。
本当に現代に届けて下さった事に感謝したい。
まあまあよかった
主人公のキャラがない。そして声がこもっていて主役を見るありがたみに欠ける。継母が塔にこもる理由が説明されない。それはおそらく物語の構成で、主人公に冒険をさせる必要があって、継母を探させることにしたけど、理由については何も思いつかなかったのだろう。意味ありげに匂わせる表現が多々あるが、中身はそれほどないようだ。考えても無駄だと思う。でも改めてもう一度見たい気がする。お父さんがノリノリだ。お母さんが魅力的な少女の姿で現れる。しかもやたらと有能で、頼りになる。それに対して魅力を感じるのは倒錯していてちょっと気持ちが悪い。
往年のジブリ映画風と13個の積み木
面白かったです。確かにストーリーは破綻しているし、テーマも主張も分からないし、成長物語ですらないのだけど、往年のジブリっぽさや、ハラハラドキドキ感もあって、満足できました。
考えてみれば、子供の頃の冒険ごっことか、大きく言えばこの世界の成り立ちとか、ストーリーも起承転結も無く流れていくわけで、この映画の訳の分からなさも、こんなものなんじゃないかと、そんな感じです。
自分が年取っただけかもしれませんが(汗)
追記
菅田将暉が声優をやっているというのでどの役だろうと思って見ていました。主人公かなとも思ったけど、声が若々しすぎるし。で、調べたらアオサギ役をやっていたと!これはかなりの驚きです。というか、めちゃくちゃ上手い。それだけでももう一回観てみようかなと思っちゃいました。
因みに眞人の父が木村拓哉、老婆のキリコ が大竹しのぶ、大叔父が火野正平、キリコが柴咲コウ、ヒミ役・若き日の久子があいみょん、とのこと。豪華だ。
追記
13個の積み木。宮崎さんが監督した13本の映画。なるほど。だから全編過去の作品の繋ぎ合わせな感じなのか。わざとそうしたんだ。それを継ぐことを拒否した眞人。映画自体に二重の意味を持たせているのね。
見る側に考える余地を持たせたゴリゴリなファンタジー
難解が故に、見た後も色々と考える事があって味わい深い。
ジブリきってのファンタジー作品であり、作画も含めジブリの今後に期待せざるを得ない出来であった。
後何回か見てみたいと思わされた。
今までの宮崎作品と違ったのは比較的分かりやすいキャラ立ち(表裏がない)であろう。
こいつは悪いキャラ、こいつはただ可愛いだけ、良き母、この子は正義感の塊のように単純明快だった。
だから、あの可愛いまんまるもどこかでグロテスクな面があるのでは?とドキドキしていたのだが、そんな事は無く。ただただ、可愛いだけであった。
人によってはムスカのように実は裏がありました!と言う展開の方が好きかも知れないが、今回の単純なキャラ設定は物語の難解さを緩和する良い材料になっていると思っている。
ストーリーには触れないが、そこはかとなくブレイブストリー風のジブリ作品と言うのが人に伝えやすい表現かなと思っている。
あそこまで明確なストーリーでは無いがあくまで雰囲気はまぁあんな感じかなと。
個人的には例えばアンパンマンの様に明快な作品が良いとは思っておらず、あれやこれやと考察したり、自分なりに深淵を探ったり、背景を妄想したりできる作品が好みであるので今回の作品はとても"楽しめている"。
映画にとっての"分かりやすさ"は一つの要素であれど全てでは無い。
見る側に何か想像の余地を残したり、考えさせたりする事も手法の一つである。
よって、"分かりにくい"から駄作だと言うのは流石に無理がある主張だと思っている。
極論、ピカソの絵は"分かりにくい"から駄作であると言うのと一緒で、少なからず見る側の器も試されていると思う。
ラストのほう途中で寝ました
お父さんの声が良かったです♡♡♡
わらわらは違和感がありました。まっくろくろすけやこだまと比較するとちぃかわみたいでジブリっぽくなかったです。
アオサギは手足が生えてオジサンになるまでは怖くて良かったです。物語もその辺りから退屈になりました。
あとエンディングの米津さんもちょっと違うかなって思いました。
わがままで、さいこう!
またハヤオ監督が撮ってくれて嬉しいです。
監督が自分たらしめるものをそのまま描くことにこだわり、覚悟のようなものを感じました。
君たちはどう生きるかは中学生の時は少年に、大人になってからはおじさんに、親になってからはお母さんにシンパシーを感じながら読んてきました。
往年の名著君たちはどう生きるかのタイトルにとらわれていたのは映画の始まりから数分で、それからは監督に考えるな、目の前のスクリーンを観ていろと言われているような展開とすごい、凄まじい画から目が離せなかった。
観ている間、何だこれ、もしかしてすごいものをみせられているのか、すごいすごいと心のなかで大はしゃぎしてしまいました。
とにかく作りて側が、観る側をあまりかんがえていない、とにかく監督が作りたいものを真摯に作ったのだと伝わってきた。こんなにわがままな映画をつくれる宮崎駿監督は凄いし、撮らせたスタジオジブリも懐が広い、そこに感謝。
とかくいろいろ言われがちなジブリ作品だと思うけれど、わたしは最高に面白かった!凄かった!良かった!また観る!たぶんなんども。
画面を見よ、まず絵を見よ
これはもう「画面を見よ、まず絵を見よ」な映画。物語の意味さがしに類することはいろいろ行われるだろうけど、あの老婆たちに『白雪姫』の「七人のコビト」が影を落としているのがあまりにも明らかなように、たぶん出典を見つけてゆくのはむしろ容易すぎるくらい。しかも過去の宮崎作品の記号がくりかえし利用されているのは、誰の目にも歴然。つまりそれらはこの映画では別に「暗号」でもなんでもなく、読み解くことを期待されていない。
そういうふうに絵が物語を伝達する器にすぎないものと理解することから離れて、まっすぐ画面に向き合うことができれば、これほど豊かなテクスチュアを持っているアニメーション作品も、そうはない。
水、風、木の匂い、泥と石の手触り、カエルの粘膜、血の味、火花の痛み、弓の弦の音、等々…。これはそういうものを「絵」だけで作り出して動かしていることのすごさに驚くべき映画ですね。
確かに宮崎駿の原液、そして意味深長
宮崎駿の原液だと思って観ると理解しやすいと聞いていたのでそのつもりで観ました。過去作の原点となるような体験が矢継ぎ早に登場し、物事や自分をどのように観察・把握すると宮崎駿のようになれるかという、その視点や姿勢のコツみたいなものか感覚的に掴みやすくなっていました。宮崎駿の感性に近づくためのスピードラーニングという感じです。
また、直家Goチャンネルが紹介されてましたが、都市伝説系のメッセージも数多く散りばめられており、宮崎駿はいったい何者?と、より一層宮崎駿の巨人感が高まる作品でした。
渇望、そして消化不良
「風立ちぬ」(13)から10年の渇望感!事前情報がなくてもあっても、きっと多くの人が劇場に押し寄せたに違いありません。パンフレット発売まで先送りとは驚きましたが(汗;)。関東大震災からの復興をモチーフに描かれた前作と似ているのかなと思いきや途中から「えっ、そっち系?」という展開でした(笑)。そこの分野は宮崎監督の得意技なので、「よし、きたぞ!」という感じでした。といっても過去のエンタメ作品にあったようなグイグイと冒険に出かけていく感じとは違って、心の奥へ潜っていくような感触でした(個人的な感覚です)。ある種の成長譚には通過儀礼が描かれることが多いと聞いたことがありますが、今作でもそれらしき描写があったように感じましたが、正直なところ、消化不良でした(汗;)。たくさんの登場人物間の関係性や様々なキャラクターに当てられたメタファーの意味するところがよくわかりませんでした。「君たちはどう解するか」という夏休みの宿題ですか?(苦笑)
宮崎駿のSDGs
「君たちはどう生きるか 吉野源三郎」を中1の頃に読んだ。
この現実の社会の一員としてどう生きるかを問いかけと中学生の自分は受け取り
大人になった様な…認めてもらった様な誇らしい気持ちが読後に残った記憶があります。
宮崎駿脚本作品〜自分の受け取りが浅いのか
選ばれし者だけの物語の様に感じてしまいました。
1人の勇者についていく仲間、勇気づける女性。
賢者は誰なのか?そしてその者は力を持つ個人としてヒエラルキーの構造を生むのか。
その選ばれた者だけの社会という価値観を壊したい。
ある意味でキャンセルカルチャーを意識する映画であった。
理由や動機が分からないので、没入できない(ずっと第三者目線
なぜそれをしているのか、なぜそれをする必要があるのか、世界観についての説明や、キャラクターの行動に対する動機の説明がないので、没入できません。
自分事化して、「マヒトがんばれ!」「お母さんがんばれ!」と応援するスタンスになりにくく、どうしてもボーッと起きてることを眺めているだけになりがちです。
その為、こちらの感情が揺れ動きにくくて、退屈な時間が続いてしまいます。
青鷺はマヒトに「お母さんは生きています。お待ちしていますよ。」と伝え、マヒトを建物内(塔内)に誘ったが、なぜマヒトに来て欲しかったのか、建物に入ったマヒトに何をさせたかったのかの説明がないので、観る側に目的を共有してくれません。
おばさんも、なぜ建物内で出産したかったのか、体調が悪い中でなぜ1人で建物内に向かったのか、その理由が分からないので、目的が不明という点では同じです。
パラレルワールドの中のヒミ=マヒトのお母さんも、なぜ鳥を燃やしているのか、理由を教えてくれません。
ワラワラを助けると何が起こるのか、逆にワラワラが死ぬと現実世界で何が起こるのか、説明してくれないので、ヒミの行動を応援してあげることができません。
各キャラクターたちは恐らく大切な事をしているのだと思います。使命感を持って取り組んでいるのかもしれません。ただ、その行動の目的意識や、動機の説明がないので、自分事化できないのです。応援できないのです。
スクリーンで起きてる行動を観てはいるのですが、キャラクターの心情や上記部分の説明がないので、「なんでやってるんだろう?」という疑問を持ち続けながら観ることになります。
例えば、「それをしないと世界が滅んでしまう」とか、「それをすれば現実世界で母が生き返る」とか、「あることをすれば青鷺にかけられていた呪いが解けて人の姿に戻れる」とか、分かりやすい目的や動機があって、その説明が冒頭にあった上で、パラレルワールドでのやり取りが進んで行くのであれば、もっと素直にマヒトの冒険劇として楽しめたと思います。
何かやってるし、何か起きてるけど、理由や背景が分からないので、ただボーと観てるだけだし、悪くいえばそういう風に観させられてるだけでした。
もっと子供たちでも分かりやすく、マヒトの冒険を応援できる理由付けがあってもいいのではと。
ジブリって、そういうシンプルなストーリーでいいんじゃないのかなと思いました。
映画を見ながら想像を膨らませ状況を整理する
※厳密にはネタバレしてないと思いますが、念の為ネタバレにしてます。
ただ淡々と思い出しながら殴り書きになってること、ご容赦ください。(個人的なメモみたいな感じなので)
個人的には、"とても好きな作品"となりました。
たぶんこの話を大枠で考えた時、戦時中という時代背景となっている事で良さをより分かりやすく実感できたなと思ってます。
仮にこの話が現代近い時代だった場合、この家族関係は実現しなかったのでは?と思ってます。
全体的に登場人物が、みんな"人間臭い"のがとても好みでした。
完璧者は基本おらず、良い部分もある中、人によっては悪い、やらない方が良いことをしてしまう部分も持っている。
実際に存在していそうな"人間"というキャラが敷き詰められてて好きです。
そして、話を見進めていく中でそのキャラクターの心理描写(思ったことを台詞として声あてしてるなど)がなかったのが余計にキャラの関係性を考えながら見れました。
事前情報(あらすじなどを含め)全くなかったことで、絵画を見て人によって感じることが違うを映画で体感できた気分です。
細かい伏線を全部回収したい!知ってこその作品と思う方もいらっしゃれば、絶妙に残されることで想像を膨らまし、「もしかしたらこういう事なのかな」を考えるのが楽しい方も生まれるのもまた人間らしいなと見終わったあと、レビューをいくつか拝見して思いました。
(私は後者ですが、、)
この作品をこの年で見れたこと、とても嬉しいです。
隣の家族連れの方はお子さんが冒頭の演出で泣かれてしまっていたので、お子さんには少しショッキングなシーンがあります。
そんな子も今後大きくなって、見て、どう感じたか聞いてみたいです。
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