君たちはどう生きるかのレビュー・感想・評価
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宮崎駿なき世界をどう生きるか
令和6年7月3日に映像ソフト発売との事なので記念に書きます。
私は去年劇場で観てきました。
個人的には、もう活劇を撮らないならいいか…と、「もののけ姫」を最後に宮崎監督作品から離れていましたが、それでも今回劇場へ足を運んだのは、往年のプロレスラーかロックバンド並に引退と復帰を繰り返す監督のいよいよ本当の最後かも知れないと思ったからです。
映画は只々宮崎監督の衰えを感じて切なくなるものでした。そんな事は分かりきっていたじゃないか、それを覚悟のうえで看取るつもりで観にきたのだろうと自分に言い聞かせても、やはり溢れ出る「詰まらない」という感情。
導入部の母との死別、どこか軽薄でデリカシーに欠ける父や新しい母との距離感の描き方は流石という感じですが、疎開先の屋敷に何か人に対して意思が有りそうな青サギや大叔父が建てたという塔が出てきた時点で、あぁ異世界へ迷い込む話かと察しがつきます。
ところが異世界へ迷い込むまでにやたらと時間を掛けるのです。もうこっちは察しているのに、いつまで経っても行ったり来たりを繰り返して焦らします。そしてその焦らしが面白さに繋がっているように感じられないのです。
そしてようやく異世界へ行ったら行ったで、そこで描かれる殺風景でどこかで見た様なモチーフだらけの異世界の魅力に乏しいことと言ったらありません。
この作品を機に未鑑賞の宮崎駿監督作品を鑑賞していきました。特に「千と千尋の神隠し」は異世界に迷い込んだ少女がそこでの経験を経て少し成長する物語として、本作とも類似しています。こちらはとにかく腰が抜けるほど面白かったです。冒頭の掴みから異世界へ迷い込むまでのテンポの良さ、異世界とそこでの暮らしの魅力は本作とは雲泥の差ではありませんか!
ファンの中には今作と宮崎監督の少年時代のエピソードやスタジオジブリ内の事情等を照らして、私小説的な作品として評価している人もいる様ですし、作品のそういう楽しみ方があるのも分かります。しかしそういう予備知識のない、物語の上辺だけをすくう人でも楽しませる映画を作れたのが往年の宮崎駿だったんじゃないのか!?と思うとやはり淋しいのです。
ただ今回一番面白かったのは監督が次回作に意欲を示しているという報道が出た事。真偽は定かではありませんが、これまで残してきた作品で既に十二分に楽しませてくれた方なので、今後いかなる駄作を撮ったところで許されるはずです。我々はただ天才の所業を震えて傍観するのみ!
何より私は宮崎駿監督なき後の世界を生きる覚悟がまだできていません。例え誰にも理解できなくても妥協なき作品を完成させてくれる事を期待しています!!
希望の物語だった。号泣した。
以前見た時のレビューを書いておきたいと思って備忘録。
前情報で難解だという意見も多い作品だったが、見てみたらもうドバドバに泣いてしまった。
たしかにものすごく哲学的で、ストーリーとしてはおもしろい!と一言でくくれるようなものではなかったため、宮崎駿以外がこのような作品を作ったとして、世間でここまで評価されるかどうかはわからない。
ただ私はものすごく感動した。
「滅びゆくこの世界で、愛する君と同じ速度で共に歩むことすらできないが、それでも僕は前を向いて生きる」という希望の物語をみたんだ…と思ってむせび泣いた。素晴らしいものを見た。
大叔父さんから積み木を託される終盤のシーンに、この映画のテーマというか伝えたかったところを感じて涙してしまった。
もし自分だったら、こんな作品を世に残すことができたのなら、もう死んでもいいと思えてしまうのではないかとさえ思った。
あと映画全体の世界観が好き過ぎた。
画面をずっと見れる。
ムチムチの魚を捌くシーンはかなり興奮した。
見てはいけない他人の夢
よく分かりません
さすが宮崎駿
うーむ、難しい
理解できない人を容赦なく斬り捨てていく迷作
前提としてあくまでも私自身ジブリのファンであり、批判したり攻撃したい気は一切ない。ただ他のレビューでも私と同じく様々な疑問を持った方がいらっしゃたため、これから視聴するか検討している方々に対し私なりの意見を述べたいと思った。普段映画を見ないため、他の方に比べれば知識不足であることは自明である。そして一部ネタバレを含むため、注意していただきたい。このことに留意してレビューを読んでいただけたら幸いである。
宮崎駿監督の映画ということで見に行った。流石ジブリと言わんばかりにアニメーションはやはり素晴らしく作画もよかった。音響も良かった。しかし同時に内容面においてかなり違和感を覚えた。
まず人物構成である。主人公の義理の母の描写は正直いらないのではないかと思った。彼女がいる事で物語に感情移入しにくかったと共に一種の困惑を感じた。ずっと心に異物混入している感覚を覚えた。ジブリらしくない設定で完全な迷走だと私は考える。彼女の存在は別に居なくてもよかったし、なにより主人公が土壇場で彼女に対しての評価を掌返しする感覚は私にはとても理解し難かった。あの展開は流石に論理の飛躍が過ぎる。
また、全体的に布石が多すぎて散漫な印象を受けた。これらの要素が分かりやすく劇中で回収される訳ではないので見れば見るほど理解できず、歯痒さを感じる。
確かに概要を見ると今作は宮崎駿にとっての実験的試みであると記載されている。所謂アニメーションというカテゴリではないのだろう。芸術作品に近い位置付けなのだろうか、ある程度その手の知識の蓄積がある人を前提に作成したと感じる。(ちなみに筆者は世界史選択のため文化史などは学習済み)
ここからは意見の分かれる部分だと思うので、一意見として読んでいただきたいが、難解とは決して美徳ではない。万人にわかる必要はないが、背景知識を持っていない人を置き去りにして分かる人にだけ相手をするというある意味無責任な作品の作り方には些か疑問である。そして今回その感覚を宮崎駿の作品に感じたことは非常に残念である。正直鑑賞した後の後味の悪さは今までに経験したことないものだった。もう一度書いておくがこのレビューは決してジブリや宮崎駿に対する批判ではない。あくまでも一般人の率直な意見として参考にして頂ければ幸いである。
宮崎ワールド
思ったよりも楽しめた
ジブリ過去一多様。
スルメ映画
観た直後はよくわからんってなった。
ジブリはもっとファンタジー色強めの方が好きだし。
凡人には理解できないけど、アカデミー賞を受賞したからみんな便乗して称賛してるんだなと。
こんなもん星2じゃ。
で、レビューするのにいろいろ思い返したり調べたりしてたんだけど、気付いたら星の数が増えてた。
実は天空の城ラピュタだったり、もののけ姫だったり、ハウルの動く城だったり、思い出のマーニーだったり、これまでのジブリ作品を観たことがある人ならニヤッとさせられるシーンがあちこちに散りばめられてる。
たくさんの人がいろいろと考察してて、調べれば調べるほどどんどん面白くなってくる。
ポスター1枚だけで、一切のプロモーションなしに映画を公開するとい試みもかっこいい。
あと、音楽がやばい。
地球儀を映画館で聴いた時も鳥肌だったけど、改めて聴くとじんわりと心に溶けていくような感じ。
どうやったらあんな曲が作れるんだろう。
不思議。
おそらく万人にはウケないし、誰かにお勧めしにくい映画ではあると思う。
でも、何故か惹きつけられる魅力がある。
そんな映画だった。
宮崎駿監督、よく頑張りましたね。
あなたは素敵です。
家族のことで葛藤と不満を抱える内向的な思春期前の少年がダークファンタジー体験を経てコンプレックスを解消する私小説
宮﨑監督は少女の物語ばかりを作ってきたが、正直、オッサンとしては少女が健気に頑張る姿は頑張れと応援する気持ちは起っても、自分のこととして共感はできない。父親のような目線になり、主人公の少女とは距離が出る。だから、少女が主人公の宮﨑アニメは一回見れは十分で、二回以上劇場でみたいとは思わない。だいたい、少女が主人公の映画をオッサンがみるとか、気持ち悪いし。
今回は、思春期を迎える前の少年が主人公だ。眞人は内向的で無口な性格だ。それでいて実は結構、攻撃的である。内向的で無口で攻撃的。ああ、分かる。自分の思春期を思い出しても、その感じ分かる。
その内向的で無口で攻撃的な眞人が、サギ男にだけは内心を吐露する。ただし攻撃的なものの言い方で。そして、いっしょにダークファンタジーの探検を開始する。ああ、分かる。君にもやっと友達ができたんだな。でも、その友達にも酷いこと言ったりして、うまく関係が築けなかったりする。ああ、分からないでもない。(笑)
眞人は、相当屈折している。このまま育ったらどうなるんだろうと心配するに足る少年だ。
その彼が、仲間と共にダークファンタジー世界に踏み入る。ここからは、怪奇・ホラー・変態・グロテスク・ナンセンスの世界だ。エログロナンセンス(怪奇・変態)の世界っていうのは、要は大人の世界ってことだ。大人の世界で、自分の心のもやもやを少しづつ解消していく。そして、最終的にスッキリして、コンプレックスを整理して、帰還する。
帰還後の眞人は詳しく描かれていない。内向的で無口なのは変わらない様子だが、屈折や葛藤は解消された様子だ。他者に対する攻撃性もおさまったに違いない。
明らかに宮﨑駿が自身の少年・青年時代のコンプレックスとその解消の過程を描いた私小説だ。五木寛之の青春の門を思い出した。つまり、自分の少年青年時代のコンプレックスを描くって恥ずかしいよね。しかも宮﨑駿は世界的巨匠だ。その巨匠が自分の恥ずかしい内面を赤裸々に描くって、凄いことだ。
宮﨑駿は、全世界が目撃する創作物で自分のコンプレックスをオープンにして解消したわけだ。勇気がありすぎる。
オッサンとして自分の少年青年時代を思い起こして、共感できる。肝心な時は無口になるのも共感できる。絵の凄さと相まって、凄い作品だと思う。
10代の男の子にこそ見て欲しい作品。少年よ、誰にも言えないコンプレックスがあってもいいんだよ、と。
勝小吉
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