「千と千尋ほどはわかりやすくない」君たちはどう生きるか Tenjinさんの映画レビュー(感想・評価)
千と千尋ほどはわかりやすくない
劇場で2回、家でもう1回見ましたが、いまだによくわからない話という印象が消えません。結局、これはどういう世界なのかということを理解しようとする方に気が行ってテーマを受け取るどころではないんですね。
大ざっぱに言うなら、母を亡くした少年が異世界でいろいろな経験をして、現世で抱えている葛藤(後妻として来た母の妹になじめない)にけりをつける、ということなのかなあ。しかし、異世界は何のためにあるのか、とか母やその妹はなぜ異世界にいるのかというあたりが謎のままです。
作中の描写から、異世界は死者の国でそこからまた現世に戻る仕組みがある、ということはわかります。いわゆる輪廻転生的な? その世界を維持するために塔の上の賢者(大叔父)が積み木を積んでバランスを保っている、という感じでしょうか。最後にはそれが崩壊しているので、あの世界はなくなったのだとしたら、死者は生者の世界には戻れなくなってしまったのかもしれません。
そもそも、塔は宇宙から降ってきたらしいので、まさに異物でありいずれなくなる運命だったとか? 大叔父に言わせれば現世は愚かな世界らしいですが、異世界も理想郷というほどではなく、割と殺伐としているような気もします。
主人公とヒロインの一人であるヒミはかなり棒読みの演技でジブリの悪い癖が出ていますが、まあ、何とか許容範囲といったところ。それ以外の人たちは気になりませんでした。
主人公が新しい母を「夏子母さん」と呼ぶのはちょっと違和感。慣れていないうちはよそよそしく「夏子」と呼んで、受け入れたら「母さん」と呼べばいいのではと思ってしまいました。過渡期の複雑な心境が出ているといえばその通りなんですが。
絵はヌルヌルと動くし、ジブリらしいカラフルでファンタジックな映像は健在。音楽も静かな場面で鳴るピアノがいいですね。見ていて退屈はしません。また何年かして見直したらたとえば「悪意」の意味とかがわかるようになるんでしょうか。
