「この時代だからこそ」君たちはどう生きるか hiwaさんの映画レビュー(感想・評価)
この時代だからこそ
タイトルと鳥の絵のポスター1枚。覗き見せず、聞き耳を立てず、思い切ってめくって飛び込んだ先の作品世界への没入体験。
目隠しでスクリーンの前まで連れてこられたような、鑑賞前の時間も含めてエンターテイメントだと思った。
このクオリティの作品を世の中のたくさんの人が事前情報ほぼなしで鑑賞するなんて、なんてワクワクする仕掛けだろう。
設定についていけるよう、集中して見ているうちに、真人と一緒に塔の世界に落ち、不思議な世界をめまぐるしく体験する。
個人的には仕掛けにのっかって大正解だった。
なんでも手の平で調べられる時代、正解を探さずにはいられない時代だからこそ、この作品から受け取れるメッセージは人それぞれ、自分で感じて自分で考えなくてはこの仕掛けの意味がない。
作品の中ではどこからか降ってきた塔がどうしようもなく世界を歪めるけれど、完全なる悪人はでてこなかった。
悪意も善意も入り交じるこの世の中で、善意の石をそれでもコツコツと積み上げていけるのは、勇者でも何者でもないただこの世界に生きる私達1人1人だ。
真人が自分につけた傷、悪意のしるしだと言った傷。自分に向けられた悪意か、自分で自分に向けた悪意か、周りの大人に心配をかけた悪意か。悪意のしるしを認めた上で、前に進む勇気を真人のように持てるか。
鑑賞前と鑑賞後で、タイトルもポスターの絵も見え方が変わった。
素晴らしい体験だった。
共感ありがとうございます。
悪意のしるしを認めた上で、前に進める勇気を…。そうですね。
自分を知り自分をコントロールすることができるようになった彼は他をも知り、意志を持って扉の先へ向かってはばたいた。
タイトルにされたように、〝この時代だからこそ〟監督は引退を撤回してまで、その宿命を果たそうと奮い、素晴らしい体験をさせに戻ってくださったのだなと感じます。