「画面を見よ、まず絵を見よ」君たちはどう生きるか comeyさんの映画レビュー(感想・評価)
画面を見よ、まず絵を見よ
これはもう「画面を見よ、まず絵を見よ」な映画。物語の意味さがしに類することはいろいろ行われるだろうけど、あの老婆たちに『白雪姫』の「七人のコビト」が影を落としているのがあまりにも明らかなように、たぶん出典を見つけてゆくのはむしろ容易すぎるくらい。しかも過去の宮崎作品の記号がくりかえし利用されているのは、誰の目にも歴然。つまりそれらはこの映画では別に「暗号」でもなんでもなく、読み解くことを期待されていない。
そういうふうに絵が物語を伝達する器にすぎないものと理解することから離れて、まっすぐ画面に向き合うことができれば、これほど豊かなテクスチュアを持っているアニメーション作品も、そうはない。
水、風、木の匂い、泥と石の手触り、カエルの粘膜、血の味、火花の痛み、弓の弦の音、等々…。これはそういうものを「絵」だけで作り出して動かしていることのすごさに驚くべき映画ですね。
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