「13個の積み木に何を見出すか」君たちはどう生きるか ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
13個の積み木に何を見出すか
現時点で私自身感想が定まっていない…というのが本音です。かと言って2度目を見たいか?と訊かれたらそうでもないという。
面白いとかつまらないとかは置いといて、とにかく人を選ぶ作品でした。
「風立ちぬ」以上に抽象的・観念的な描写が多いです。
では難解な作品か?と言われればそうでもないようにも思えました。ごくごくシンプルで身近にある大事な事にたどり着くために、めちゃくちゃ回り道をする作品です。
その回り道を楽しめれば最高でしょうし、楽しめなければ苦痛かもしれません。
作画面では冒頭が素晴らしく、新しい描写に惹かれました。
しかしそれ以降はごくごく今まで通りのジブリに終始してしまい、よく言えば安定感がありますが。悪く言えばいつものジブリといった描写が続きます。尺も長いので睡魔と戦いながら見ていたというのが本音です。
1番感心したのは音響でした。
セリフのないシーンでの環境音や、劇伴の入りのタイミングはどれも絶妙であり、作画の向こうにある世界を感じさせてくれました。モブキャラのガヤを極力廃したシーンも多く、音の使い方が繊細でした。ここは映画館で体感した方が分かりやすいかもしれません。
鑑賞後の気持ちは虚無ですね。「あ、ここで終わりか。」って感じでした。
でも振り返るとヴィルヌーヴの「メッセージ」のような問いかけを映像で見せようとした…そんな作品に感じました。
どこまでもアート映画っぽいなとも思えました。美術館で絵を見てて、解説とかなしに見ながらあーだこーだいうような。そんな感じ。
だから通り過ぎていく人もいるだろうし、立ち止まって見て自分なりに解釈して咀嚼する人もいるだろうし。
見る人の数だけ感想は出るけど、分かりにくさ故に離れてく人も多い。大衆エンタメ性を捨てて個人的なアート映画に徹した。世間の評価を考えず、好きなものを好きなように表現した。そんな映画です。
こんな感じなんで、この作品が世間一般にウケることはまず絶対にないと断言できます。それでもそれなりに観客動員できたとしたら、それは宮崎ブランドと鈴木プロデューサーの戦略あっての事でしょう。
しかしこれだけ個人的な感性のままに描いた映画を商業作品として大々的に公開できる宮崎ブランドの信頼性は伊達じゃない。普通この規模の映画でやれる事じゃないですよ、これ。
これまでの功績なしには絶対に作れない映画でしょう。そういう意味ではもの凄く我儘で、それでいて豪華な作品とも捉えられるかもしれません。
積み木の意味は一体何なんでしょうね?
私はこれまで大衆受けを重視してきた己の過去作品への別れ。その宣言のようにも思えました。
だとすれば、次回作以降が宮崎駿が本当にやりたい作品なのかもしれません。