「遺言」君たちはどう生きるか ストレンジラヴ氏さんの映画レビュー(感想・評価)
遺言
「あばよ…友達」
あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!
おれは劇場で「地獄の黙示録」を観ていたと思ったらいつのまにか宮崎駿メドレーを観ていた…
な…何を言ってるのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…
漱石だとかガウディだとかヘミングウェイだとかルイス・キャロルだとか江戸川乱歩だとかそんなもんじゃあ断じてねえ…
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
宮崎駿が今後引退宣言をすることはないだろう。
しかし、遺言はした。
いや、宮さんのことだからまた「作りたくなったから何か作る」と言い出しそうな気がしなくもないが、年齢を考えるとこれが最後の可能性が高く、本人もそれを強く意識していたようだ。
Twitterでも誰かが書き込んでいたが、今まで僕たちが観てきたものは宮崎駿ではなく「宮崎駿の水割り」でしかなかった。「風立ちぬ」(2013)でさえ彼の中では咬ませ犬だったのだ。あの時劇場で泣いたんだぞ?どうしてくれる?
何よりもまず、宮崎駿だからこそ成立し得たし公開が許された作品で、他の人間がこれをやろうものなら総スカンは免れず、業界からも相手にされなくなるだろう。
それくらい予習が必要な作品。事前予告一切なしだが、これまでのジブリ作品+「ルパン三世 カリオストロの城」を押さえたうえで、かつ仏教を齧らないと到底ついて行けない。初めて宮崎駿を観るならばこの作品から始めるのは絶対にやめろ。
残酷な言い方をするが、これは宮崎駿にしか描けない。少なくとも吾郎には絶対無理だ。
製作者が同じである以上、モチーフが重なるのは仕方ないとはいえ、自分が今までやってきたことを振り返るような作りになっていた。気持ち「もののけ姫」と「ハウルの動く城」色が強め。
これを観たら、ジブリに関しては後戻りはできない、そんな気がした。
追伸:事前予告一切なしだったので声を聴いたりエンドロールが流れた際には劇場でどよめきが起こりました。らしいと言えばらしいのですが。