「この国に明るい未来はない!」しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司 青りんごさんの映画レビュー(感想・評価)
この国に明るい未来はない!
大人1人で鑑賞。大人だけで来てる方も多かったです。
クレしんの映画は当たりハズレが激しいので毎回観るか迷うんですが、今回は当たりの方で良いと思います。
参考までに個人的にハズレなクレしん映画は、金矛、3分ポッキリ、アミーゴ、カンフー、引っ越し、天カス、等々です。
アタリは、ヘンダーランド、暗黒タマタマ、ブタのヒヅメ、ジャングル、大人、戦国、ユメミー らへんです。
今回はかなり社会風刺が強めですね。
今作の悪役(みつる)は共働き世帯で寂しい子供時代を過ごし、同級生にいじめられ劣等感を持って育ち、両親は離婚、大人になって派遣社員をしながらアイドルヲタに。しかし心の支えだった推しが急に結婚&引退、さらには銀行強盗?の犯人に間違われ警察に追い回され…悪の心に支配されて、超能力を使って次々に事件を起こしてしまいます。
製作側の意図としては、共働き世帯や、離婚した片親の家庭を批判的に描きたい訳ではなく、明るい未来を描けない状況にしてしまった国や政治に対しての、全ての国民の悲痛な叫びを描きたいんだと思いました。
悪役たちの口から「見て見ぬふりして問題を後の世代に背負わせてきた」とか「経済は衰え、超高齢化、この国に明るい未来はない」といったようなセリフが多々出てきますが、私も一人の大人として、しんちゃんぐらいの子に「そんな事ないよ!日本の未来は明るいよ」と堂々と答えてあげられないかな…。
政治批判的なニュアンスや社会風刺をこの手のアニメに盛り込むと、賛否が分かれるのは当然わかっていたと思いますが、それでもあえて挑戦した製作陣の勇気を称えたいです。
確かにシビアな描写も多いですが、しんちゃんならではのギャグパートも勿論ありますし、ラストでは野原一家が充に手を差しのべて一緒に手巻き寿司を食べて、誰も置いていかない優しさが描かれています。
みつるは今までのクレしん映画の悪役の中でも一番可哀想な人間なので、救いがあって良かった。
「頑張れ!」のセリフは確かにちょっと違和感ありましたね。
あれに関しては、今の日本(政府)は弱者を切り捨てる一方なので、ひろし(一個人)の立場からは頑張れと言うぐらいしかしてあげられないっていう現実を表現したいのかなと思いました。
みつるの年齢設定が25歳ぐらいだったら「まだ若いから頑張れ」のセリフの違和感が多少軽減されたかも。
あと深キョンの曲のチョイスおもしろかったー。「いろいろ試したけど深キョンのこの曲が一番いい」ってなんかわかる気がする。
エンドロールは原作者の臼井先生へのリスペクトが感じられて良かったです。
★3.8