「「色々手遅れになっていて、取り返しの付かない事になっていて・・・」」658km、陽子の旅 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
「色々手遅れになっていて、取り返しの付かない事になっていて・・・」
今作に於いて、一番の台詞というか、自白、懺悔、そして吐露したい願望が詰まった台詞だったと自分は痛い程伝わった 多分世の殆どの人が、何とか巧く世間と折り合いを付けている(と、少なくても自分にはみえる) 勿論、それは不断の努力の結果であり、本来の思い描いた理想とは違う挫折を乗り越えての貴い礎故の現実かもしれない だから今作のような所謂"コミュ障"の人、若しくは本来普段の努力を怠った卑怯者に対しての他人の風当たりは強い そしてそれは痛い程本人達も自覚している そして卑怯故、家族や親族に庇護を求める 勝手な理解キボンヌだ そんな甘えの構造を今作はどう物語化するのだろうという興味を元に観賞してみた
先ずは、時間を追う毎に主人公に同化するかの如く、気持のアダプテーションが進んでしまう 感情移入が止まらないのだ 自分も他人に対して劇中の如く、ゴニョゴニョした聞き取りにくい発声を起こしがちを自覚している 全く以て自信が無い、そもそも他人の前に現われるなぞ不遜の極みであり、自己卑下&自己否定の権化と成り果ててしまっている 自死できないのは死ぬのが恐いからという消極的意思故 そんな主人公の唯一の攻撃対象は父親 もう其処にしか自分の落とし前を擦り付ける場所がないからである だからこそそんな想像上の諸悪の根源が突然病死してしまったことの落とし前を初めは着けるつもりだったのだろう しかし、そうは問屋が卸さない 幼少時の父親が、想像上に一緒に行程を共にすることで、父親からの叱咤が出現する 『亜麻色の髪の少女』を空で歌う竹原ピストルは大変贅沢な演出だ そしてかの歌は幼き頃、主人公が歌っていた事に"うるさい"と叱責した父親が、その後、親族にとって想い出になる程熱唱していたという事実を突きつけられての主人公の溶解を徐々に作劇してみせた制作陣に頭が下がる 他のネタバレサイトに腑に落ちる考察があったが、主人公の夢は『芸能界』だったという事 そしてその夢は努力の甲斐もなく、しかも現実には躰の提供という倫理観の欠如を強いる出来事に心を壊されてしまった成れの果てであると言うイマジネーションに深く合点がいく 自分なんぞ依り、何倍も努力と犠牲を払ったのだ そしてその結果としての下層位置 スマホが故障中、強がりのプライド、そして父への決着 そんなないまぜが今作に於いて一片に怒濤のように訪れての、あのロードムービーなのだろうと、そのストーリーテリングに感嘆する 神か父親の差配か、主人公を襲う地獄は、同じ属性として、居たたまれない極悪な状況の連続である 過去の黒歴史である"枕営業"※勝手な妄想ですのですみません、自分よりも若いヒッチハイカーの生き生きとした行動、バイタリティ溢れる女性の行動等、その全てをまるでザッピングの如く体験する事で、今迄の澱を溶かすかの如く主人公の精神と躰をデトックスしていく 心優しい老夫婦に癒しを施して貰い、そして未来へのヒントを与えるなんでも屋の女性との邂逅の中で、一皮剥けた主人公が取る行動は泥臭い、そして自分本位な青森へのヒッチハイクの懇願 12時迄には青森に着きたい 父親の手を握りたい その一心は、自分の今迄の見て見ぬ振りをしてきた逃避を自ら断じる覚悟を充分演出してみせたと思う
だからこそのサプライズとしての、本来は火葬予定時間だったのを、延長した親族の計らいに、主人公のちっぽけなプライドが、一気に氷解したラストだと涙する もっと甘えて良いんだと、そしてだからこそその恩返しは後の世代へ続けていくものだと、その循環に頭の下がる作品内容であった 今現在の自分に相似する内容に有難みが倍増である
主人公は、青森に戻って、リセットして欲しい そう願う自分は間違っているのだろうか?。。。
こんにちは、
もういばねまさんには過去作品・・・
はるか過去からすみません。
レビュー読ませていただき、ただただ驚愕しきりです。
陽子の夢・・・芸能界・・・?!
他に、海辺で海飛沫に濡れて泣いてたシーン。
自殺未遂・・・だったんですか?
(すみません、他の方との、コメント交換で読みました)
なるほど、納得です。
死にたくなりますもねー。
ただ、疑問なのはいつ乾燥機に掛けたんでしょうね・・・とか、
突然雪が降り積もってたり・・・
寒いとは言ってたから、初雪かも・・・
(確かに、映画的な演出は多々ありましたね。)
僭越ながら、私はこの映画、今年度のベストです、
お邪魔しました。
読んで頂けたらすごく嬉しいです。
コメントありがとうございます。
出会った二人目の若い娘はユーチューバーぽかったですが、急に強く拒絶されてましたよね。L?とか一瞬思いましたが、何だったんでしょう?
おはようございます。陽子に寄り添い旅する考察に感動しました。つかみどころのないように見えたはじめのあたりから、デトックス、癒し、邂逅、の流れのなかで、逃避を断じる覚悟がその一心に基づき脈を打ちだし陽子に息吹を与えていく。やっと辿り着くが遅刻の現実。そこにおきた〝サプライズ〟による、氷解。父まであと数歩のところでおきるそれに涙😭でした。青森リセット賛成です。凛子さんの熱演には、陽子に重なる内側をみた気もします。