「文句ばかりなのに感動してしまった」658km、陽子の旅 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
文句ばかりなのに感動してしまった
長らく会っていなかった父の葬儀に出席するために青森へ向かう陽子のロードムービーなのだが、色々と文句が浮かんでしまう。
まずはヒッチハイクをすることになった経緯。子どもの怪我はわかるけど、陽子を残して全員で病院行くか?妻と娘をサービスエリアに残して夫と息子だけ病院に行けばよくない?
それに所持金がないのはわかるけど、実家には電話できるだろ。番号覚えていないのかと思ったら、中盤つながるし。もうなにかの苦役を自分に課したかのような展開に少しつらくなってしまっうし、陽子の選択が間違いだらけで少し苛ついてしまった。
あと陽子のキャラもキツい。コミュ障すぎるのも苛立つところ。車に乗せてもらったのにまったく話さないわ、ありがとうも言わないわ。そんな彼女がヒッチハイクなんて相当ハードルが高いのもわかるけどさ。こんな苛立ちを感じるのも自分が陽子のような生き方をしていないからなんだろうな。最低限のコミュニケーションもできない人がいることも知っているから、それを受け入れないとこの手の映画は観れない。でも、他人の車に乗る怖さもわかるけど、他人を車に乗せる怖さもあるんだぞ!
父であるオダギリジョーが幻覚のように陽子の周りに登場するが、あの父娘に何があったのかがハッキリしないままなのも少しモヤモヤする。
そんな文句がたくさんある(書き出したら思った以上にあって自分でも驚いた)のに、最後の陽子の独白や彼女の態度の変化、そしてラストに感動させられてしまうんだから自分のチョロさに嫌気がさす。そもそもロードムービー好きだしな。他人にはあまり勧められないが印象深い映画になってしまった。
確かにもやもやはたくさんありまし たね。陽子の生きづらさを味わいながら見守りました。何でもないことが難しくなるような過去がはっきり描かれないぶん海でのシーンは想像が膨らみ苦しかったけれど、あの慟哭を境に彼女が変わっていき、出会いが希望につながるのが嬉しかったです。