「せっかくオダギリジョーを使うのなら、もっとコメディ・タッチにしても良かったのでは?」658km、陽子の旅 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
せっかくオダギリジョーを使うのなら、もっとコメディ・タッチにしても良かったのでは?
人生にうまくいかず引きこもりのような生活を送っていた主人公が、自分で何とかしなければならない状況の中で、コミュニケーション能力と生きる力を取り戻していく様子が、ロードムービーとしてうまく描かれている。
わざわざヒッチハイクをしなくても、青森までいく手段はありそうなものだが、そんなことに気が回るほど「世間慣れ」していない主人公に、菊地凛子がうまく血を通わせていると思う。
ヒッチハイクで出会うのが善意の人々だけでなく、下心だけの輩もいて、主人公が「ちゃんと」イヤな目にあうところも、人生そんなに甘いものじゃないという説得力が感じられて良い。
物語の白眉は、最後に乗せてもらった乗用車の後部座席で、主人公が、自分の人生と父親への思いを独り語りする長回しのワンシーンだが、旅を通して主人公が成長し「一皮むけた」ことが実感できるようになっている。
ただ、その一方で、台詞ですべてを説明してしまっていることに、物足りなさも感じてしまった。
時々、主人公の目の前に姿を現す、オダギリジョー演じる(20年前の)父親は、せっかく映画的に面白くなりそうだったのに、結局、うまく活かし切れないまま終わってしまい、残念としか言いようがない。
冬の東北のどんよりとした天気と寒々とした風景が印象に残り、重苦しい雰囲気を感じてしまうだけに、ドラマとしては、もっとコメディに振っても良かったのではないかと思えるのである。
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