劇場公開日 2023年2月23日

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「命は金に変えられない、というけれど」ワース 命の値段 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0命は金に変えられない、というけれど

2023年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

人の命はお金には代えられないと誰もが思う。しかし、それを生業にする人がいる。それも酷い意味ではなく、遺族を救うために。911で犠牲になった人々の遺族に補償金を分配する仕事に就いた弁護士が直面する苦難。政府には集団訴訟を防ぐという目的がある、遺族側には大切な家族の命を金でランク付けしてほしくないという思いがある。遺族が本当に求めるものは何か、エリート弁護士が直面する心のひだを丹念に描いた作品だ。
この映画を観て、『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』を思い出した。津波で子どもたちを失った遺族は真相究明を何より求めていたが、学校側は自らの過失から逃げるばかりで真相を隠そうとする。最終手段で訴訟に踏み切った遺族たちには子供の命を金に変えるのかと心無い声を浴びせる者もいたという。遺族が求める者は金ではなく、尊厳と真相。どうすればその2つを遺族に届けることができるのか、終わりのない問いを、それでも諦めずに当事者たちは続けているのだと思い知らされた。

杉本穂高