劇場公開日 2023年2月23日

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「マイケル・キートンだからこそ体現しえた難しい立場と、その変わりゆく姿に胸打たれる」ワース 命の値段 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0マイケル・キートンだからこそ体現しえた難しい立場と、その変わりゆく姿に胸打たれる

2023年2月26日
PCから投稿

重く切実なテーマを突きつけてくる良作だ。これは米同時多発テロの発生からそれほど年月が経ってない頃の実話。まだ傷が癒えず気持ちの整理のつかない中で基金説明会に足を運んだ人々の、犠牲者の値段や計算式を突きつけられた胸中はいかに複雑で痛ましいものだったことだろうか。すべての人々を納得させる方法がない中、マイケル・キートン演じる主人公は責任者役として無償で身を捧げる。これは彼にとって疑いようのない正義であり社会的使命だったはずだが、彼の官僚主義的なやり方は思わぬ猛反感を浴びることに。少しバランスを欠くと無神経で気に触る人間に映りかねない役柄を、キートンが実直に演じ、彼の難しい立場と大きな心境の変化を、観客と等身大の目線で分かち合う。彼と理性的に対峙するスタンリー・テュッチの存在感も素晴らしい。人々の悲しみや痛みに寄り添う”あるべき姿勢”は何かを的確に点描していくサラ・コランジェロ監督の筆致が光る。

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牛津厚信