「思うところがあるので、アニメ作品ですが感想などを。」青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
思うところがあるので、アニメ作品ですが感想などを。
今年208本目(合計859本目/今月(2023年6月度)33本目)。
普段はアニメ作品は声優さんのファン枠などで鑑賞はしても、よほどの大作以外はレビューの需要が少ないし、そもそもこの年でアニメを見ることはほとんどないので(小さいころにみたドラえもんやクレヨンしんちゃん等の映画版等は除く)、レビューはしても、他に詳しい方がいるので本数には数えてもレビューは書かないほうです。
そういえば、こちらの作品には、水瀬いのりさんは出てこないことになっていたはずですが、一瞬(声優役として)出ていたような…。あれ?(このシリーズ、~~の夢を見ない系は、2023年冬にもう一つあり、そちらには出ることは明示されている)
ただこの映画、個人的にはノーマークだったものの「入学試験」という論点があることは事前に知っており、法律系資格持ちとしては憲法論的な考察も可能かなということで鑑賞。大阪市で一番大きい、800人定員のシアター。
当然上記のような事情でしたので前作などまったくノーマーク。よって、会場が暗くなるまで入場者特典のミニ小説を読んでいました。
内容としては、いろいろな事情があって小学中学と不登校気味の子が、お兄ちゃんと同じ(おそらくハイレベルと思われる)県立公立を受けたいという希望を叶えるべく、いろいろな人たちがかかわっていく物語です(超ざっくり過ぎる…)。
※ 水瀬いのりさんの役の方、一瞬ちらっと写っていたような気が…。
さて、上記のようなやや特殊な事情で見に行ったのですが、本作品は、アニメ作品であり、またタイトルが誤解を生むというか元からそうか、ちょっとわかりませんが…ややもすると「ネタ枠」という扱いを受けかねない作品ではありましょう。
ただ、個人的に見に行った動機を述べたように、この映画は、作品として「直接」言及されることがないものの、憲法的な観点からかなり示唆に富んだ作品であり、また、多様性を認めるようなポジティブな作品が多く、VOD(ネットフリックス)等で過去作も見てみたいと思ったし、2023年冬の後編(?)も楽しみです。
日本には、憲法上「学問の自由」と「教育を受けさせる義務」があります。この「学問の自由」は大日本帝国憲法(旧憲法)から主に「大学の」ものを指すと解されていたところ、「大学以前の過程を飛ばして大学に入ることはできない」「学問の自由を保障する以上、その学問研究の基礎となる、基礎知識の習得を前提とする小中高のそれも当然に保障されるという考え方」が背景にあります。また、後者は「国民三大義務」の一つですが、「教育を受けさせる義務」は、主体は保護者であっても当事者は子供であるため、背景に同時として、当事者(子供)自身が親や親せきなどに「この教育を受けたい」と申し出るという「子供の学習(選択)権」という概念が存在するとされます(通説)。本映画は背景としてこのような憲法論が見え隠れしています。
また、特に今日では「準義務教育」と言えうる高校においても、今でこそリアル日本、あるいは映画内で示されるようないろいろな進学が可能になりましたが、少し前は「親の負担をかけないように公立のステータスの高い高校に行くのが当たり前」「あるいはそれでも無理なら、県内で有名な私立に合格できるように」といったものがあり、特に前者はどうしても(都道府県によって制度は違いますが)内申点という概念があるため、義務教育という建前でありながら、いじめ等で不登校であった子にはそもそもその道がなかった時期が実際にあったのは事実です(現在ではある程度客観的な証拠があれば、配慮されるようになっています)。まして、まだそれでも「私立高校なら…」で、当時は通信制やフリースクール(サポート校)といった概念がなかったり薄かったり、あるいは存在は知られていても「行くところではない」等と言われていた時期もあったのも確かです。
また先に述べた不登校問題等も本人に帰責性がない(特にいじめ等)場合等に、「準義務教育」と言えうる高校への進学を閉ざすことは、本人のためになりません。そのため、映画内でも示されるようないろいろな選択肢が(リアル日本でも、映画内でも)用意されていて、「どれが正しい、どれが正しくない」といった考え方は次第に取られず、中学3年生にもなると本人の意思を尊重して「自分の選んだ進路を選ぶ」ということが普通に尊重されるようになってきたのは、この30~40年ほどでリアル日本(および、映画内の描写)が歩んだ「子供の学習権」の考え方です(その一つがこのような多種多様な学校(便宜上、フリースクール等も含む)の柔軟な運用と、どの進路を選んでも最低限の学力は身につくようにという配慮などがあげられます)。
この映画は、本人の帰責性が少ない「いじめ等による不登校」を扱った部分があり、またそれに伴って必然的に発生する「高校受験をどうするか」という論点を真っ向から扱っている部分があり、個々各自が述べている意見も「すべて」正しいものです(いずれかの意見が全面的に正しく、他が誤っているということではない)。換言すれば、今はそれだけの選択肢がリアル日本にも存在するのですね。
こういった、(公式が意識したかどうかは不明にせよ)憲法論的な議論が隠されていた映画であり、法律系資格持ちとしてはどうしてもはずせず鑑賞せずにはいられなかったのですが、描写としてきわめて正確に描かれており(教育行政の観点等)、好感が持てたところです。
減点対象としては特に気になる点はありません(それにしても、主人公の家はお父さんもお母さんも帰ってこない家なのかなぁ…)。
次作も楽しみにしているし、次作は応援している水瀬いのりさんが明示的に(声優枠として)出るようなので楽しみです。