「ニーバーの祈り」きみの色 ゆみなさんの映画レビュー(感想・評価)
ニーバーの祈り
きっと誰もが色を纏っている。
高校生のトツ子は、人が「色」で見えるというある種の特殊能力を持っている。同じ学校に通っていた美しい色を放つ少女きみに憧れを抱いているが、ある日突然きみが学校を退学したことを知る。どうしてもきみに会いたいトツ子は本屋でバイトしている噂を元に彼女を探し始めて…ってあたりが序盤のあらすじ。
全体的に優しいトーンで優しい色で語り口までぜんぶ優しい。トツ子は誰にでも穏やかできみちゃんもルイくんも落ち着いた印象。でもバンドを組んで結束感が高まると徐々にテンションも上がっていくのがよかった。
3人が秘密の共有も何だか絆を深くさせたような…きみちゃんは学校を勝手にやめたことを祖母に言えないでいて、ルイくんは医者を継ぐことを願っている母に音楽が好きなことが言えない。トツ子は一見何もなさそうに思えるんだけど、子供の頃に通っていたバレエ教室でジゼルが踊りきれずにやめてしまった事が心の傷になっているように思えた。あんなにバレエが好きだったのに。もしかしたらトツ子が自分の色だけ見えなかったのは、自己肯定感の低さからかもしれない。
結局、きみちゃんとルイくんはちゃんと秘密を明らかにして家族をライブに見てほしいと言う。ライブシーンがとても良くて、最終的には観客も踊り出すぐらいに盛り上がる。いつも味方になってくれたシスター日吉子がいちばん嬉しそうにも思えた。
トツ子が幼少期に踊りきれなかったジゼルを校庭で踊るシーンがとても好き。太陽にかざした手が鮮やかな赤色に見えて、トツ子の心がやっと解き放たれたように感じた。
ラストのきみちゃんの『がんばれー』って叫ぶ大きな声にちょっと泣いた。
『きみの色』ってタイトルはきみちゃんのことを指しているのかと思ってたけど、観客に向けた言葉なのかもしれないね。誰もが自分の色を持っていて、それが少しでも鮮やかに人生を彩れるように日々を大事に生きていきたいと思えるようなお話だった。
