劇場公開日 2024年8月30日

「3人のゆるい関係性が魅力的だった」きみの色 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.03人のゆるい関係性が魅力的だった

2024年8月31日
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鑑賞方法:映画館

最近、バンドをやる女子たちのアニメがやたらと増えている気がする。声優たちによるバンドを結成して音楽活動すればさらに金儲けできるからなのか。私自身はバンドをやったことがないが、バンドをやる人達の物語は結構好きだ。同じ目標を持って頑張る人達の姿に無性に感動してしまうから。いや、バンドをやるのに最初は目標なんてないか。やりたいからやるんだよな。
この映画に出てくる彼らもバンドを始めるときに目標なんてない。勢いで発言したお誘いの言葉が現実化しただけだ。バンドといってもドラムなしだったし、ここらへんが今どきっぽい。でも、一緒に合わせて、工夫して、試行錯誤して、練習しながら曲を演奏していくだけで楽しいんだよな(バンドやったことないけど)。人前で演奏するシーンも、本当に楽しそうで観ているこちらもワクワクした。やっぱりバンドは人前で演奏してナンボだよな(バンドやったことないけど)。
ここには音楽性の違いとか、いいものを作ろうとするが故の衝突みたいなものは描かれない。彼女たちの保護者の姿勢も基本的には温かい。思い出してみたら嫌なやつが全く登場しなかった。彼女たちがついた嘘も優しさからくるものだったし。バンドやっているメンバーに男女がいれば陥りがちな恋愛トラブルも表面的には浮上しなかった。
だから大きなトラブルを起こしたり、巻き込まれることなく物語が終わっていった。彼女たちが抱える問題も根本的に解決されたわけでもない。起伏のない話と捉える人もいるかもしれない。でも、個人的には大満足の映画となった。あの美しい色彩のアニメとトツ子の明るさ、そして3人のゆるい関係性に魅力を感じてしまったから。彼女たちに前向きな未来が待ち受けているとは限らない。でも、なんか明るく生きてほしいと思うし、そうなるんじゃないかと思わせる終わり方だった。エンドロールでプロデュースに川村元気の名前を見て驚く。またこの人にやられてしまったのか!と。
最後にあの曲のことも触れておかないと。あれ?、「ボーン・スリッピー」っぽいイントロ!と思っていたら本当にカバー曲だった。観ているこちらが楽しくなる、いい使われ方だ。またバンドをやってみたくなる(バンドやったことないけど)。

kenshuchu