劇場公開日 2023年8月4日

「とんでもない設定なのに感動してしまう(いつものピクサー)」マイ・エレメント kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5とんでもない設定なのに感動してしまう(いつものピクサー)

2023年8月15日
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鑑賞方法:映画館

ピクサーはたまにとんでもない設定の映画を作ってくる。ネズミが人間界の名シェフになろうとする「レミーのおいしいレストラン」や人が住めなくなった地球でごみ処理を続けるロボットの恋を描く「ウォーリー」、一人の女の子の頭の中にいる感情たちを描いた「インサイド・ヘッド」なんかは、個人的にかなりとんでもない設定だと思っている。そして本作。火、水、土、風のエレメントたちが生活する世界で出会い、恋をする水の男性と火の女性を描いた物語。最近のディズニーが推し進めるポリコレに最適の設定と言える。
案の定、冒頭はエレメントシティに移住してきた火の夫婦の話から始まる。なるほど、これ移民の話なんだな。他のエレメントからはちょっと煙たがられる火の人たち。たしかにあの4つのエレメントなら火は危険すぎる。だから火の人たちが居住するコミュニティができていき、他の住民とは距離を置いてしまう。まさに移民の話だ。
とんでもない設定なのに、どんどんエレメントシティの世界観に浸かっていく。風景もキャラクターも、水と火の表現がとてもリアル。水浸しになったときの水は実写なの!?と疑うくらい。それぞれのキャラクターの特性とか、エレメントシティの自治とか、細かい矛盾点をいろいろ考えるとキリがないから、あまり考えずに鑑賞するのが得策だ。
だって、最終的にはあんなに心が揺さぶられるんだよ。橋の下のあのラブシーンは最高だった。観る前から、2人の恋物語だけでなく、親子の絆や、自分たちとは違う他者を受け入れるという要素も含む物語になるのだろうと予測していたはずなのに。
ディズニーだけでなく、ハリウッドが推し進めるポリコレの要素も、この程度だったら大歓迎。直接的な表現ではないから、説教くさくならずにとても見やすかった。やっぱりピクサーはとんでもない設定を、最終的にはいい話に仕上げてくる。次のとんでもピクサー映画は何になるんだろう。今から楽しみだ。
※字幕版を鑑賞

kenshuchu