「子供向けとしてはいいと思う」マイ・エレメント 福島健太さんの映画レビュー(感想・評価)
子供向けとしてはいいと思う
ディズニーはリトル・マーメイドのアリエル役で「アニメのイメージとは違うのに敢えて黒人女性を起用するのはポリコレを意識しすぎ」などと批判的な意見がネット上で多く見られました。(僕はアニメはアニメ、実写は実写でいいと思ったけれど)
差別を排除しようという立ち位置であれば、人間の人種なんかよりも、「絶対に一つになることのできない火と水」をくっつけてしまうこのお話の方がずっといいと思います。
例えば日本国内でも琉球民族やアイヌ民族などの少数民族がいて、アイヌの伝統的な狩猟が日本政府に認められなかったり、本来の生き方をさせてもらえない事実はあると思います。
劇中で主人公の火の女性が水の男性の家へ招かれた場面。
水のカーテンの下を通るときに男性が腕をかざして水を堰き止めた下を通っていました。
火なのですから、あのカーテンの下をくぐるだけでも、消えてしまう危険があります。
逆に、クライマックスで、ガラスを使って一度堰き止めた水が押し寄せたときから、暖炉の中に逃げ込んで、水の男性が「ここは僕には暑すぎる」といって、消えてしまったかと思われました。
暑いだけで蒸発してしまう危険がある。
相手を思いやるってことがなければ、一緒にいるだけで消えてしまうかもしれない。
黒人と白人だなんて言っても結局人間で、同じものを食べ、同じように起きて働いて寝て、生活します。
火と水に比べたら、お互いの違いはずっと小さいのに、そのわずかな違いを差別して嫌っているのは、優しさがないことです。
「みんなそれぞれに違いがあって、だから相手を理解するために優しさを持ちましょう」っていう、話に深さがあるとは思わないけれど、子供向けの単純な道徳はわかりやすくて好きです。
父親と娘でも自分の気持ちを伝えられずに、父親の望むような一人前の後継者になることを優先して、自分らしい生き方ができない、だから心にゆとりがなくて、かんしゃくを起こして自分も相手も傷つける。
同じように、民族の文化であれ、価値観であれ、他者との違いで自分を抑圧している人達はいるでしょう。
アニメだし、これくらいなら十分にいい話だと思います。