「ノワールやバイオレンス物をアップデートしてきた韓国映画にしては少々古臭い」野獣の血 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
ノワールやバイオレンス物をアップデートしてきた韓国映画にしては少々古臭い
国内のみならず世界市場も意識してエンタメ作品をアップデートしてきた韓国発の新作にしては、センスが少々古臭い印象。原作小説は2016年発表、舞台は1990年代の釜山に設定されている。
邦画で比べるなら、少し前の北野武監督による「アウトレイジ」3部作、さらに遡ればVシネマ、東映実録シリーズといった具合に、かつて暴力団と呼ばれたヤクザ組織の抗争、足を洗いたい個人とそれを許さない組の掟などを、ある種のロマンチシズム、滅びの美学を伴って描いた作品群に近いだろうか。だが昨今はヤクザの組などが反社会的勢力と言い換えられたように、ヤクザたちの暴力沙汰をエンタメの文脈で描くこともメインストリームの商業映画では難しくなった。社会的な通念、価値観が変わってきているのだから、作り手も観客もアップデートが必要ということ。
それと、終盤に来るハイライトを冒頭で相当部分見せてしまう構成も、狙ったほどの面白みを生んでいないというか、むしろ逆効果ではないか。主人公のラストの“大きな決断”は先に見せないほうがよかった気がする。新人監督のデビュー作にしては切れのある良い演出だったとは思う。
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