「この監督らしい透明感あふれる映像と感情の軌跡が際立つ」それでも私は生きていく 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
この監督らしい透明感あふれる映像と感情の軌跡が際立つ
ミア・ハンセン=ラブが紡ぐ物語はいつも、眩しい日差しと透明感あふれる映像が印象的だ。たとえ主人公にとって辛く苦しい現実が舞い込もうとも、それをなぞるように日差しが陰ったり、透明感が薄れたりはしない。かくも悲劇性を強調するわけでも、楽観視しすぎるわけでもなく、とてもニュートラルな視座で観客の思考をいざなってくれるから、我々も個人の物語にスッと入っていける。また、主演のレア・セドゥの存在感も自己主張しすぎることなくそこにナチュラルに立ち、彼女の切れ長の目線が言葉以上に心の流れを投影する。父の介護と、自身が見つけた愛。これらを決して二者択一にせず、いずれの問題も片方を失う理由にはしない。ここが本作の特筆すべき点だろう。もちろん、そこには様々な感情の交錯がある。自分の本心と向き合い、家族や恋人、幼い娘に対して愛を伝える上で、主人公の”通訳”という生業が物語をそこはかとなく味わい深いものにしている。
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