「人生には晴れる日も雨の日もあるけれど、みんな頑張って生きてるのです。これはそんな一人の女性の人生の数ページを切り出して描いた作品。」それでも私は生きていく もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
人生には晴れる日も雨の日もあるけれど、みんな頑張って生きてるのです。これはそんな一人の女性の人生の数ページを切り出して描いた作品。
予告編のヒロインのデートシーンが良い感じでした。
最近観たフランス映画に (もしくはフランスが舞台の映画)
良い作品が多かったこともあり鑑賞です。
ヒロインの名はサンドラ。
夫と死別し、娘と二人暮らしのシングルマザー。
通訳の仕事で生計をたてている。
鑑賞する前は、夫を亡くしたヒロインが
娘と一緒に明るくたくましく生きていくストーリー
そんな感じかな、と思っていたのです。 …が
話が進むにつれ、そんな単純なお話ではなく
ヒロインが置かれた状況がシビアな事が分かってきます。
#その1
#まずはシングルマザーである事。
#離婚した訳ではなく、死別のようです。
#通訳の仕事が出来るので、それなりの生活は出来ている。
#その2
#父親の事。元は哲学の教師。慕う生徒もいたようだ。
#現在は病気。
#認知症ともアルツハイマーとも違うらしいのだが
#次第に視力が失われ、記憶障害の兆候も出てきている。
その父はアパート(マンション?)で一人暮らし。
サンドラは定期的に父の元へ通って世話をしているのだ。
自宅ドアのカギを開ける事もできなくなった父…。 むむ
辛抱強くドア越しに話しかけ、何とかドアが開く。
恐らく、このような状態が続いているのだろう。
父の症状は、ゆっくりと悪くなっていくのであろうか…。
そんな状況に当然、父の一人暮らしを危ぶむ声が出てくる。
介護施設に入れなければ、と姉妹や親戚とも相談を重ねる。
# あそこは高い。こちらは評判が良くない…。
# 公営の施設はなかなか空きが出ない…。
大好きな父を思い、より良い環境で暮らしてほしい。
そう考えてあれこれ悩むのは、結局サンドラの役目だ…。
父が部屋を引き払う日。
父の元生徒たちも手伝いにやってきた。父の本棚の本は
サンドラと元教え子たちの手により持ち出されていく。
一方、本以外の調度品は誰も引き取ろうとしない…。
父の身の回り品をカバンに詰めながら
感情のうねりがサンドラを襲う。
” 寂寥感” ”無常感”
この感情を持っていく先は、普通は”無い” 。
堪えきれずに溢れる涙。こぼれる嗚咽。
そんなある日。
サンドラは昔なじみの懐かしい男性と再会する。
宇宙物理学の研究をする学者のクレマンだ。
何気ない会話を交わす。
楽しい。久しぶりに心がときめいた。
会う回数が増える。
あなたがから誘ったのよ、と言い訳しながら
自分からキスをするサンドラ。
二人の関係は仲のよい恋人同士のようで
なんの障害もも無さそうに思えてくる。
クレマンに妻子がいなければ、の話なのだが…。
…
と、まあ
こうして始まったサンドラとクレマンの禁断の恋。
どうなっていくのやら… というお話です。・_・;
繰り返しますが、クレマンは妻子持ちです。
ついその事実を忘れてしまいそうになる程
明るく描かれる「不倫・純愛ドラマ」です。
サンドラの恋の行く末を応援しつつも
カゲで泣く人がいないと良いなぁ と気にしながら
映画館を後にしました。
◇
◇ あれこれ
■本棚の本は、その人を現す
父の本棚にあった本を移しかえながら
サンドラがこのような事を娘につぶやきます。
「この本棚の本が、実際の父よりも父らしく感じる」
どうして?と問う娘に
”本棚の本がその人の本質を表すの”
”その人が自分で書いた本ではなくとも”
”その本を選んだのはその人なのだから”
その通りかもと、しみじみ。
映画の観賞履歴なんかもそうなのかも… ・_・;
まあ今更取り繕ってもしょーがない と、開き直り☆
■恋人と愛人
恋する人 と 愛する人。
どちらも、自分の好意の対象となる相手を指すのに
後者を漢字二文字にすると途端にイカガワシく感じてしまいます。
なんか不思議です。・_・;
■レア・セドゥ(サンドラ役)
逞しさと脆さが同居する女性を好演してました。
2014年版の「美女と野獣」に出ていたと知り
この作品は観た記憶があるので、当時の鑑賞メモを検索。
”呪いが解けた王子がおっさん臭い”
う~ん 「美女」の感想はどうした…?
◇最後に
"水の上で優雅にたたずむ白鳥も"
"水面では必死に水をかいている"
そんな言葉が頭に浮かんでくる作品でもありました。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。