「Fairytale of Knowhere. おバカで乱暴で優しい、奇跡の様な一夜を貴方へ…。」マーベル・スタジオ スペシャル・プレゼンテーション ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
Fairytale of Knowhere. おバカで乱暴で優しい、奇跡の様な一夜を貴方へ…。
マーベル・コミックのキャラクターが一堂に会するスーパーヒーロー映画「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」に属する作品で、銀河のアウトロー集団「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の活躍を描く『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのスピンオフ。
地球はクリスマスシーズン。少年時代のピーターが悲惨なクリスマスを過ごした事をクラグリンから聞いたマンティスは、今年こそ彼に最高の経験をして貰おうと、ドラックスと共にとあるプレゼントを用意するのだが…。
監督/脚本/制作総指揮はジェームズ・ガン。
○キャスト
ピーター・クイル/スター・ロード…クリス・プラット。
ネビュラ…カレン・ギラン。
ロケット…ブラッドリー・クーパー。
グルート…ヴィン・ディーゼル。
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』『ラブ・アゲイン』の、名優ケヴィン・ベーコンが本人役で出演している。
製作総指揮はケヴィン・ファイギ。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)と、厳密に言えば『ソー:ラブ&サンダー』(2022)と『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3』(2023)の間の出来事を描いた、40分程度の小品。知る人ぞ知る珍品『スター・ウォーズ・ホリデー・スペシャル』(1978)のファンだというガン監督たっての希望により実現した企画である。
正統なタイムラインに組み込まれている作品ではあるが、そこはあくまでもスピンオフであり、大勢には影響しない。自分は本作未鑑賞の状態で『3』を鑑賞したが、それで「?」とはならなかった。むしろ、本作を鑑賞してから『3』を観ると「この出来事があったのにまだお前は立ち直ってないんかっ!」とピーターを一喝したくなるので、『3』鑑賞後にこれを観るのがベストな順番な気もする。
オープニングのMCUロゴがクリスマス仕様。そこにかかるBGMはポーグスの「Fairytale of New York」(1987)。この時点でもうこの作品が傑作である事は確定している。「ニューヨークの夢」から始まるクリスマス物語なんて、そんなもん泣くに決まってるだろっ!いい加減にしろっ😠
ストーリーは有って無い様なもの。ハリウッドに降り立ったマンティスとドラックスが街ブラをし、地図をパクって金を巻き上げてパトカーをひっくり返してケヴィン・ベーコンを誘拐するという細やかな漫遊記である。……お巡りさん、彼ら一応銀河を救ってるんで、今回の事は水に流してつかあさい🙇
『GotG』シリーズは強力なキャラクター映画なので、基本的に彼らが登場するだけで作品として成立する。登場しさえすれば、後はその中で何をやろうともオッケー。ある意味で、ハリウッド版『ドラえもん』、もしくは『クレヨンしんちゃん』と言えるのかも。『アイアンマン』(2008-)や『キャプテン・アメリカ』(2011-)では、こういう脱力系なホリデー・スペシャルを作る事はできないでしょうね。
ほぼコントの様な内容だが、そこは流石のジェームズ・ガン。前半はキャラクター描写力の高さでしっかりと笑いを作り、後半は確かな演出力でホロリと泣かせる。イルミネーションで彩られたノーウェアの美しさ、それを見上げるピーターの嬉しげな表情。こんな画一発観させられりゃ、そりゃガン泣きもするっつーの😭
ここで触れておきたいのは、今回の主役ケヴィン・ベーコンさん!このベーコンという人選が絶妙✨言わずと知れた名優でありながら『13金』(1980)や『トレマーズ』(1990)の様なガラクタ映画にも出演しており、さらに脇役もこなせるバイプレイヤーでもあるからこそ、『GotG』の世界にピタッとマッチしている。マーベル的には『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011)、ガン監督的には『スーパー!』(2010)と、製作サイドとの繋がりも深く、正にこれ以上ない人選と言えるだろう。
演技的にはかなりリラックスしているというか、正直ユルユルな感じもしたのだが、その緩さが作品の身の丈に合っている。最後には一曲披露しちゃったりして、もうサービス全開である。この作品を観れば、彼の好感度が急上昇する事間違いなし!
余談だが、もしベーコン以外の役者なら誰をチョイスするのが相応しいかを妄想するのも楽しい。チャーリー・シーンやエミリオ・エステベスではちょい弱いし、ビル・マーレイやカート・ラッセルだとちょっとジジィ過ぎるか。個人的にはマイケル・J・フォックス、もしくは中の人繋がりでシュワちゃん(クリス・プラットのお義父さん)というパターンを観てみたい。という訳で、ガンちゃん役者変更バージョンであと何回かホリデー・スペシャル作って!
どこまでもおバカで、どこまでも乱暴で、どこまでも優しく、どこまでも美しい。はみ出し者たちに訪れた聖なる夜の奇跡に、心が洗われました✨
ここで心底惜しいと感じるのがガモーラの不在。彼女が居ない事で作品のハッピー度が100から70くらいに減ってしまっている。これも全部『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)で彼女を雑に殺しちゃったせい。やっぱ『GotG』はMCUとは切り離してシリーズ展開していって欲しかったなぁ…。今更こんなん言っても仕方ないんだけどさ。
もう一点、なんか回を増すごとにヨンドゥが聖人化していってません?少年ピーターとヨンドゥの仲睦まじいエピソードがエンディングで描かれていたけど、『1』の頃のヨンドゥは結構ヤバい奴だった気がする。プレゼント渡し合ってほっこり☺️なんて、そんな少年時代をピーターが過ごしていたなんて思えんのですが…。あれはピーターが辛い過去の思い出を無意識に美化していただけ説を、私はここに提唱したい。
