「石川頑張れ!!」レディ加賀 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
石川頑張れ!!
今年1月1日、石川県能登半島を中心に起きた巨大地震。
新年の幕開けの日を突如襲った惨事に衝撃…。
被害は甚大、今も多くの人たちが避難所生活…。同じく巨大地震を経験した東北の者として、一日も早い復興と生活を。
本作の舞台である加賀市は震源地から離れ、大きな被害は免れたらしいが、地震の影響で客足は激減。北陸新幹線開通で大いに賑わう筈が、温泉地である同市にとっては大きな痛手…。
そんな様々な理由から、今年本作が公開された事は意義深い。
タップダンサーになる夢破れ、実家である温泉旅館に戻ってきたヒロイン。
加賀の温泉町を盛り上げる為、若女将たちがタップダンスでPR。
しかし、様々なトラブルが…。
温泉町×若女将×タップダンスの組み合わせや“レディー・ガガ”に掛けたネーミングはユニークだが、作品自体は平凡。『フラガール』など何処かで見た話や要素の詰め合わせ。
演出や脚本などの薄さも否めない。森崎ウィンの役は何だったの…??
ヒロインや周りが各々抱える問題や成長なども予定調和。クライマックスのイベント当日でのトラブル続出など、もはや漫画である。
それらありきたりではあるが、安心して見れるという事でもある。この手の作品が好きな方には腹八分目で楽しめる。
本作ならではの“機転”も。モップが無ければたわしで、たわしが無ければ雑巾で。女将は機転を活かす。クライマックス、ステッキ不足で代わりに用いたのは、モップ。温泉や女将ならでは、らしくていいじゃないか。
多くの方が言っておられる通り、小芝風花が可愛い。とにかく可愛い。ただひたすら可愛い。
魅力ぎっしり、大爆発。小芝風花を見るだけなら100点満点、いや200点だろう。
可愛いだけじゃなく、この役柄に必須な喜怒哀楽演技もしっかりと。改めて、高い演技力を持った若手実力派であると。
見事なタップダンスも披露。
終始、彼女に見惚れ。作品の平凡さや演出/脚本不足を座長として充分補ってくれた。
製作されたのは能登半島地震前。故に震災への言及は無い。
が、奇しくも繋がったものが。
毎年旅館を訪ねてくる夫婦。岩手の人で、東日本大震災で仕事も家も失った。
夫婦で自殺をしようとしていた。せめて最後に贅沢を。
夫婦の顔を見て察知した女将は、岩手産の米や卵を振る舞う。帰りの際、来年もまたお待ちしてます、と。
夫婦は翌年も訪れた。以降、毎年。死ぬのを思い留まったのだ。
一時のおもてなしが支えに。
それはこの旅館や女将にとっても。客足が遠退き、畳む事を考えていた。
訪れてくれるお客様が居るのなら。
東日本大震災、能登半島地震…。
お客様も従業員たちも。
皆助け合い、支え合い、思い合い、苦難から立ち上がる。挫けない。生きていく。
ラストシーン。小芝風花が魅せたタップダンスと笑顔。夜空に上がる花火。
我々が石川県にエールを贈らなければならないのに、石川県から元気を貰った。
震災から今日で8ヶ月経ち、夏や秋これからの行楽シーズンで石川県へ赴いたり、本作を見たりで、せめてものエールを。
石川頑張れ!!