「笑顔の大切さに気付かせてくれる」レディ加賀 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
笑顔の大切さに気付かせてくれる
タップダンサーになる夢に挫折して、実家の旅館を継ごうとした主人公が、一人前の女将になるために奮闘する話なのかと思っていたら、結局、タップダンスに打ち込むことになって、「あれ!女将の修行はどうなっちゃったの?」という違和感がない訳ではない。
ただ、若い女将たちがタップダンスの練習に取り組む姿には、青春映画のような面白さがあるし、おそらく相当な練習をしたのであろう出演者たちによるタップダンスも、見応えがあって楽しめる。
イベントの直前に、次から次へと問題が発生する展開には、随分と「無理矢理」感があるものの、それでも、現在の能登半島の状況がオーバーラップして、思わず主人公たちを応援してしまった。
(「震災」という言葉が出てくるところには、ギクリとさせられた。)
ところで、母親が主人公に語った「旅館の女将として一番大切なもの」が、「諦めたり、くじけたりしない強い心」であるということは、終盤になって分かるのだが、タップダンスの師匠が主人公に語った「君に足りないのは、観客を魅了する・・・」の先の言葉が、最後まで明らかにされなかったのは、どうしてだろう?
これについては、少しモヤモヤしたまま映画を観終えるところだったが、主人公が花火を見上げるラストシーンを見て、もしかしたら、それは「笑顔」だったのかもしれないと思い当たった。
険しい顔の主人公による厳しいだけの練習で、タップダンスから心が離れてしまった仲間たちが、師匠による楽しい練習で、みるみる上達していったところに、そうしたことが象徴されていたようにも思う。
何をするにも、「笑顔で楽しむ」ことこそが、自分自身だけでなく、周囲の人々にとっても大切なのだということを、改めて気付かせてくれた映画だった。