「安心感のある日本製品らしさをもち、さすがと思わせられる当たり映画シリーズの一本。」名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン) eigazukiさんの映画レビュー(感想・評価)
安心感のある日本製品らしさをもち、さすがと思わせられる当たり映画シリーズの一本。
少年天才探偵と悪の秘密組織との戦いを描く推理アクションアニメ映画。外見は幼い小学生だが体力や精神年齢は大人であり頭脳明晰で天才探偵でもあるコナンはある日、孤島にある国際的な研究所に潜入する。そして研究所内で事件が起こる。コナンは事件を推理していくが裏では悪の秘密組織の陰謀が進行していた。
点数:3.5。安心してお勧めします。はずれ映画ではけっしてない。良作映画なので観た後がっかりして映画館を出ることはけっしてないであろう。アクションなどの映像に迫力があり起承転結があって盛り上がりがはっきりしており推理ものなので事件が解決したときには必ず爽快感がある。映画館でどの映画を見ようか迷ってもコナンを選べば安心感があると思う。不満な点はリアリティに欠ける点が多いこと。悪い意味でマンガ的な発想が多い。
本作の魅力は物語の起承転結がしっかりしており見終わったあとの満足感が高いこと。主人公コナンは名探偵シャーロック・ホームズのような万能のスーパー名探偵なので、その活躍を安心して見ていられる。常勝の名横綱や最強スポーツチームや選手や時代劇の水戸黄門のように100パーセント信頼できる主人公への日本製品のような安心感が本作の最大の魅力であると思った。
本作の物足りない部分は悪い意味でマンガ的な嘘っぽい場面が多いこと。とくにコナンが自分の小学生の姿を利用して声色を変えて他人をだます場面は嘘くさくて私は苦手だった。ほかにも海上のヘリからの射撃で潜航中の潜水艦を故障させる場面はもうすこし説得力のあるハイテク兵器を使うとかなどをしてほしかった。
視聴:液晶テレビ(有料配信:アニメタイムズ) 初視聴日:2025年7月15日 視聴回数:1(早送りあり) 視聴人員:1(一人で見た)
追記:
「コナン」という名前のキャラクターが主人公の映画は私が知る限り「コナン・ザ・グレート(1982年)」、「未来少年コナン(1978年)」、そして本作シリーズの「名探偵コナン(1996年~)」の3つある。ちなみに「コナン」は古代ゲール語で「賢明」または「猟犬」という意味の男性名だそうである。本作の「コナン」はイギリスの有名推理小説の名探偵シャーロック・ホームズの作者コナン・ドイルに由来するらしい。アメリカの実写映画「コナン・ザ・グレート(1982年)」のコナンは外見は筋骨隆々のたくましい青年である。主人公の剣士コナンはボディビルダー選手だった俳優アーノルド・シュワルツェネッガーが演じている。日本のアニメ「未来少年コナン(1978年)」のコナンは世界が滅亡したあとの孤島に住んでいる体力自慢の少年である。そして本作の「名探偵コナン(1996年~)」のコナンは外見が眼鏡をかけた幼い小学生であるが中身はもう立派な大人である。これら3人のコナンを比較するとその時代の日本人(あるいはアメリカ人)の特徴が見えてくる。1978年の日本のコナンは高度経済成長期の元気いっぱいの日本人である。1982年のアメリカのコナンは体が大きく力(ちから)こそが正義であると思っている。そして名探偵コナン(1996年~)のコナンは外見は幼い小学生で中身は立派な大人であるがこれはずるくて賢い現代日本人の特徴をあらわしている。一般的に幼い小学生は社会責任を免除されるので名探偵コナンのコナンは戦争責任を大人がしたこととして責任を回避し小学生のままでいたい日本人のメンタリティを継承しているのである。現在の日本人は中身は立派な大人なのに都合のいいときだけ子供になり戦争責任や難しい武力問題を回避する。しかし私は現在の日本人を批判したいわけではない。名探偵コナンのコナンは時代に適応した日本人をあらわしているに過ぎない。外見が子供で中身が大人だといっても悪くもなんともないと私は思う。むしろ昔の時代には逆行してほしくない。私は新しい日本人の誕生を喜んでいる。
追記2:
今回、私はコナンの映画を初めて観たが冒頭のシーンでいきなりヒロイン風の人が撃たれて死ぬのにはびっくりした。このアニメの絵で人が死んでいくのには意表をつかれた。死の描写の多い本作であるが主人公コナンは小学生への若返りという死とは真逆の特性をもっているキャラクターである。殺人を扱うこの作品でのコナンの若返りは意味があると思う。人の一生とはいわば誕生というスタートから死というゴールへ全力で疾走するマラソンであるがコナンはコースを逆に走ることができる。作者は主人公コナンの若返りと事件の被害者の死を対比させて殺人事件という二度と生き返れない被害者を救済しようとしたのではないだろうか。若返る主人公コナンが事件を解決することによって死んだ被害者にも復活の希望を与えられる。イエス・キリストは磔になって死んだのに3日後に復活し多くの人々を救済した。若返りは死なないということの比喩であるので作者は主人公コナンをイエス・キリストのような存在にしたかったのではないだろうか。