「重いテーマに中井友望が新たな表情を魅せる1本」サーチライト 遊星散歩 たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)
重いテーマに中井友望が新たな表情を魅せる1本
やってまいりましたムーラボ2023!私の1本目はかつて常連だった平波亘監督。少女を陰から引っ張り出すようなスリリングさと無骨さが凄く刺さる。
社会問題として取り上げられるようになってきた「ヤングケアラー問題」にJK散歩といった危険が孕んだ社会派作品。小さな世界に差し込む光が思いがけないモノばかり浮かんでいく。貧乏であることに対して轢かれたレールを踏んでいく痛みをヒリヒリと感じつつ、何も出来ないことへの無力感を覚える。ただそこに絶望を覚える訳では無いのも面白い所で、共感や蔑みで語らない部分が上手い。不思議な部分がそこを包みながら展開することで、ファンタジックな世界観も引き立っている。
主演は中井友望さん。前回のムーラボのイメージキャラクターを務めていた。また、『少女は卒業しない』でも根暗なキャラを演じるなど、壊れやすそうな印象を感じる。しかし、大胆なシーンも優しく入っているなど、今までとは違い、強さも兼ね備えた姿を纏う。いい意味で殻を破っており、今後も活躍が楽しみだ。
共演には山脇辰哉さん。「きれいのくに」から気になる俳優さんとして存在感を発揮しているが、今回は真っ直ぐな高校生を演じている。今まで個性派として受け取っていたので、少し意外であり新しさも感じる。他にも山中崇さんや『アルプススタンドのはしの方』の西本まりんさんといったキャストが脇を固める。インディーズで括るのは勿体ないほど豪華で見応えを感じる。
現代的な感覚で描かれた作風に幻想を一捻り。音楽も効いていて考えさせられる。その無骨さが魅力的な1本。
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