「「怖い」ゴジラがとてもいい」ゴジラ-1.0 アイダホさんの映画レビュー(感想・評価)
「怖い」ゴジラがとてもいい
昨今人類の味方として描かれることも多いゴジラだが、今回のゴジラは『シン・ゴジラ』同様完全な人類の脅威であり、恐怖の象徴となっている。
今回のゴジラはとにかく怖い。序盤からいきなり夜の闇の中恐竜サイズのゴジラが現れ、日本兵を蹂躙する様はさながらジュラシックパーク。ゴジラの顔のドアップや人間視点の生々しいゴジラの巨大さ、異質さが息を吞むような恐怖感を演出している。
映画館に親と来ていた子どもが泣いてたし、自分も正直いい齢して本気でビビった。
同時にゴジラの恐怖を一層引き立たせるのが、人間側の戦力の頼りなさ。敗戦直後ということでロクな武装も艦もなく、主人公が木製の頼りない船でいつもの巨大な姿に成長したゴジラに追いかけられるシーンは『ジョーズ』にも似た緊迫感がある。
米軍も日本政府も頼れない。核爆弾の威力を持った熱戦を吐き街を一瞬で瓦礫に変えたゴジラに、いったいどうやって勝つんだ…?
この絶望感は『シン』にも勝っているように思う。
この絶望感があるからこそ、人間側の必死の反撃も胸に迫るものがある。そういえば流れないな…という例のBGMの使いどころも、ゴジラを倒す作戦が失敗しかけピンチになる際に続々と仲間たちが駆けつける所は涙腺に来る。
そして主人公のドラマもよかったと思う。逃げ出し、逃げ出したせいで整備兵に恨まれていた元兵士が、ゴジラに特攻する覚悟を決める流れも、恨んでいた整備兵が主人公を死なせないように脱出装置を作っていたのも本当に綺麗な流れだった。
というか旧日本軍の兵器がカッコよすぎる。震電とかロマンの塊すぎるでしょう。
最後に、ラストの不穏な描写は後味が悪いとも言えなくはないが、個人的には「ゴジラをこんなんで倒せていいのか?」というモヤっとした感じの気持ちに折り合いがついたのでOK。