「過去一に怖くて、そして哀しいGODZILLAでした。」ゴジラ-1.0 麻布豆ゴハンさんの映画レビュー(感想・評価)
過去一に怖くて、そして哀しいGODZILLAでした。
こんなに破壊神としてのゴジラをヒィィィ怖い〜〜と思ったのは初めてかも知れません。特に口から発する光線は庵野バージョンよりも原点に立ち返りつつアップグレードされた無双状態で、正に世界を7日間で焼き尽くしたナウシカの巨神兵そのもの、圧巻のド迫力でした。
子供の頃に見たゴジラは既に悪い怪獣やっつける正義の味方ウルトラマン化していましたし
評価の高い庵野バージョンはゴジラそのものより政治家や官僚の真面目なマヌケっぷりの風刺がミソだったり、
幼生のゴジラが妙にコケティッシュでやはりどこかマヌケだったり、
ゴジラが巨神兵も超えて最早イデオン化しちゃってたりで、どうにも庵野流のオタク臭が気になったのですが
剥き出しの圧倒的な破壊神ぶりや、それと闘う人類側のガチの苦闘という点では本作の方が素直にストレートに表現されてた様に思います。
でも何より印象強かったのは、このゴジラは圧倒的な破壊力と恐怖の源泉なのに何故か哀しい存在だという事なんです。愚かな人間の作り出した軍事科学技術の犠牲者、その辺りもなんだか巨神兵と被って見えました。
登場人物たちの人間ドラマについては賛否両論ある様ですが、あの戦争で祖国日本も家族も救えなかった主人公たちのその後の生き様や、
それぞれの心の中で終わらないままでいた戦争の記憶を、ゴジラとの文字通り命を賭けた苦闘を通して、乗り越え生き抜こうとする様は、
この恐ろしくそして哀しき怪獣の存在と上手く重なってストーリーに深みが出た様に感じられました。
ですので、逆にパニック映画や怪獣映画に人情やら家族やら絆やら登場人物の生き様の描写なんて必要ない、ひたすらテンポ良い乾いた描写が好きって言う人は酷評するかも知れないですね。
評価は五つ星でも良かったのですが「エッ、三丁目の茶川先生(吉岡くん)が何で機雷の除去なんかやってるの⁈」の部分で『ゴジラ ー0.5』評価4.5になりましたw。
ねづさん、私もそう思います。設定を昭和20年に遡らせた事で単なる怪獣映画やパニック映画では無い、初代ゴジラや永遠の0にも通じる、個人ではどうにもならない運命や過酷な状況に置かれても決して諦めずに生き抜こうとする人の力という、愚直ですがきちんとしたテーマを伴ったものになったと思います。それを、やれ眠たいだの、演技が軽いだの、ご都合主義だの、お涙頂戴とか陳腐の一言で片付けてる意見には何か底意地の悪さや人としての冷たさを感じてしまいます。
この映画を監督憎しで酷評する輩がネット界隈に大勢おりますが、色眼鏡無しで観れないのは本当に気の毒です。
たしかに湿度高めの作劇ですが、ゴジラとの相性は良かったと思います。