「怪獣映画としてはまあまあ。それよりテーマに打ちのめされます。新海3部作に似ているかも。」ゴジラ-1.0 nyaroさんの映画レビュー(感想・評価)
怪獣映画としてはまあまあ。それよりテーマに打ちのめされます。新海3部作に似ているかも。
ストーリーとしてはご都合主義展開です。ゴジラの出没と主人公の動きが一致するところとか、主人公と疑似家族になるヒロインの存在そのものや銀座での出来事などです。その他、あまり整合性が取れていない強引なストーリー展開でした。加えて設定上の問題は、恐らく兵器などの性能とか駆逐艦のスピードとかいろいろありそうです。
が、それを許容できる人にとっては、怪獣映画であると同時に国防と家を守るということと自分の命を深く考えさせる映画となっていました。特に国を守るための意義については、シンゴジラが官僚側だったのに対して、民主主義において国を守るとはどういうことか?という話になっています。
主人公の周囲の出来事がご都合主義転嫁なのは、そのテーマを深掘りして行くために必要だった、ということは十分読み取れると思います。
もちろん、核兵器、自然災害、大規模事故のような理不尽な破壊の象徴としてのゴジラは、現代日本においては特に東日本大震災のアナロジーとしても見ざるをえません。戦後と大災害。そして海外の戦争と我が国の国会に想いを馳せる人も多いでしょう。そういう含意は幾層にも折り重なって非常に深い作品でした。
正直涙ぐみました。後半の主人公の気持ちの変遷に乗っかると、何か胸にジーンと来ました。
怪獣映画としての出来は、ゴジラの身体の設定とビジュアルは良かったです。ただ、銀座の破壊だけで終わってしまったのはちょっと物足りない気はしました。結果としてゴジラの恐怖が主人公視点のパーソナルな水準で終わってしまいました。
国がなぜ動いてくれないんだ?というイラだちをもうちょっと観客も同調できる作りだったらなあ、と思います。一応戦後の状況に絡めてGHQと国の動きは設定がありますけど。
それと小僧…坊主でしたっけ?と漁船です。まあ、やりたい事も含意もわかりますが、あそこはちょっとドラマもビジュアルも弱かった…というか下手するとギャグになってしまいました。
ゴジラは背びれの演出は凝っているんですけど、ちょっと時間かけすぎで間延びしたかなあと思います。あとゴジラの立ち姿がちょっと人間っぽくて滑稽な感じはありました。
映画館の画面で大音量で見るとスゴいという感想でしょうが、これをテレビやパソコンで見ると、それほどでもないと思います。兵器の造形も作り物感がありました。そこは過大評価にならない方がいいでしょう。
ただ、テーマ、含意は非常に優れた映画だと思います。
話の構造は全然違いますが、非常に大きなテーマで新海誠氏の「君の名は。」を含む災害の3部作とテーマは重なってきます。
もちろん象徴的なのは結末です。災害と向き合いつづけてきた我が国において、どこまで悲劇を描くかですね。命の無常を考えた場合、本作の主人公は告白できずにいたことをどう思ったでしょうか。その後悔こそが共通項かなと思います。